MSP(明治大学シェイクスピア・プロジェクト)インディーズの並行世界シェイクスピアのユニークな企画が楽しく、面白い。
昨年2016年8月の第1回公演では埋もれて隠れた作品を掘り起こし、島村抱月台本の『クレオパトラ』を「大正浪漫編」と「平成妄想編」として脚色して上演し大いに楽しませてもらったが、今回は作品としては比較的知られていても上演されることがほとんどない太宰治の『新ハムレット』で、個人的には2002年、シェイクスピア・シアターによる東京グローブ座での公演を観て以来となるもので、それだけに楽しみであった。
ただ、個人的には昔から太宰治のなよなよしい言葉遣いが生理的に受け付けられないのだが、シェイクスピアの『ハムレット』を真逆にしたような『新ハムレット』の着想の面白さには惹かれている。
今回久しぶりであったので、この公演を観る当日の朝、取り急ぎ読み返して、最初のうちはやはり太宰の言葉遣いに嫌悪を感じたが、この登場人物の台詞のなよなよしさは、ハムレットも、クローディアスも、ポローニアスも、太宰の内面性を表意していて太宰そのもので、実はそこが太宰の嫌いなところなのだが、MSPインディーズの台詞回しにかかると、その太宰のなよなよしい息づかいが消え、むしろ溌剌さを感じさせているのが魅力的であった。
大津留彬弘が感情の起伏の激しいハムレットを表情豊かに演じ、台詞回しもその感情をよく表現して好演し、昨年の『クレオパトラ』にも出演した正木拓也がクローディアスを巧みに演じ、ポローニアスを伊藤源が熱演、ガートルードを岡本摩湖が冷徹さをにじませ、ホレイショーを菅野友美が快活に、レアティーズを宮津侑生がクールに、オフィーリアを小川結子が沈着に、シェイクスピアとは真逆ともいえる登場人物像をそれぞれ個性豊かに演じた。
小劇場ならではの密度の高い舞台で、最前列で観ていると台詞回しで唾が飛ぶのもはっきりと見え、その熱演で観ている側も興奮させられ、臨場感を強く味あわせてもらった。
多謝!多謝!!
上演時間は95分。
作/太宰治、監修/井上優、脚色・演出/MSPインディーズ
8月19日(土)13時開演、早稲田小劇場どらま館
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