朗読劇の形にも、目的によっていろいろな形態があることを実感させられる。
三輪えり花のシェイクスピア朗読劇、Dramatic Readingを初めて見た時、通常の「劇読」ではなく「演読」という言葉を聞いて成る程と思ったが、今回、チラシの挨拶文に「遊び語り」の趣旨について書かれていることで、その目的としているところが一層明確にはっきりした。
朗読に表情と声の演技を加え、映像や人形を使用し、聴覚に視覚的要素を取り込むことで、聴覚・視覚・教養の3要素を満足させることを目指したこの方法を「遊び語り」と名付けたという。
開幕は、『お気に召すまま』の'All the world's a stage. And all the men and women merely players'と英語で三輪えり花が朗誦しながら登場。
出演者の顔ぶれで登場人物の役割は殆ど推定できるが、意外に感じたのは声楽家でもあるLutherヒロシ市村が自らベネディック役を立候補して演じたことであったが、始まってみると意外でも何でも無かった。
意外に感じた理由は、カクシンハンの岩崎Mark雄大が今回初出演していたので、彼が演じるのではないかと想像していたからに過ぎない。その岩崎は、ドン・ペドロやボラチオなどを演じ、市村はベネディックのほかに、悪人のドン・ジョンやドグベリーなども兼ねて演じ、ベネディックの相手役ベアトリスには三輪えり花、ヒーローに鈴木美紗、クローディオに岩田翼が演じたのは想定内であった。
「遊び語り」に教養も含めているだけに、登場人物の名前が意味するところなども説明を加え、その人物への理解を深めさせるのに一役買っていた。
また、この劇の舞台となっている場所の地図を映像で示すことで、当時、キリスト教国のイタリアやスペインとイスラム教徒の国トルコとの関係などの説明もされ、作品の背景をより深く理解できるように工夫されている。
「誰にでもよくわかる」「誰にでも楽しめる!」といううたい文句通り、何の知識がなくても楽しめる工夫がされているだけでなく、表情の演技を伴った台詞力も聞き取りやすく、またちょっぴり教養を深める英語での朗読も挟まれていて、色々な観点から楽しめた。
万人向けということは反面、汎用的全般的となって、シェイクスピア劇を色々な演出で観てきている自分にとっては説明的で冗長さを感じる面もあったが、これはこの朗読劇の欠点というわけではなく、個人的な問題に過ぎない。
加藤千晶のピアノ演奏と本格派の声楽家である市村の劇中での歌唱もご馳走である。
上演時間は、休憩15分間を挟んで2時間15分。
翻訳・構成/三輪えり花、6月9日(金)14時開演、四谷・絵本塾ホール、チケット:4500円
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