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  シェイクスピア・シアター6月公演 『お気に召すまま』      No. 2017-028

アミアンズ演じる中川奈美の唄声を楽しむ

 シェイクスピア・シアターの『お気に召すまま』はこれまでにも何度か観ているが、最後に観たのは2013年6月、同じく俳優座劇場での公演だったが、その時一番印象に残ったのがアミアンズを演じた中川奈美の唄声であった。当時とは出演者もほとんど全員変わってしまっており、今回のお目当てはその中川奈美の唄を聴くことが中心であった。
 演出の姿勢からうかがえるのは、今回の舞台では中川奈美が主演ともいえる扱いであったと思う。
 彼女の歌う場面が多くあり、最後も純白の衣装をまとったハイメンの役で中心的位置を占め、結婚のシーンも彼女の歌で全てが進行していき、彼女の歌で締めくくられ、ロザリンドのエピローグの場面はなく、暗転した後には彼女の純白の衣装姿が残像イメージとして残るだけであったことからも、そのことが伺えると思う。
前回の舞台に中川奈美以外に出演していたのは、今回同様、道化のタッチストーンを演じた高山健太のみで、彼だけが唯一、かつてのシェイクスピア・シアターの舞台を感じさせてくれる貴重な存在で、見ていても安心感があった。その高山健太は、タッチストーンと老僕アダムの二役を演じた。
 台詞力の巧さを感じたのは老公爵を演じた牛尾穂積で、その他に印象に残った演技と台詞力では、力士チャールズとジェークィーズを演じた清水圭吾であった。
 それに反して印象が乏しかったのは、ヒーローのオーランド―を演じる鈴木陽丈と、ヒロインのロザリンドを演じる鷹野梨恵子で、舞台の活気を感じさせるものではなかった。
 出口典雄演出のここ十数年の傾向として演出全体として感じる不満は、全体的に暗いことと、台詞が沈んでいることで、今回もその例に漏れなかった。
 演技所作においても、あたかも座敷の間にいるようにして正座しての会話がやたらに多く、かつてのような躍動感あふれる演技に乏しく、退屈さを感じてしまった。
 これは自分だけの印象ではなく、自分の前の席に座っていたグループの一人の若者が、1幕の途中で帰ろうと思ったと休憩時間に話していたことからも伺い知ることが出来る。
 それでも気になる存在、シェイクスピア・シアターではある。
 上演時間は、前回と変わらず休憩10分を挟んで、2時間35分。

 

訳/小田島雄志、演出/出口典雄、6月7日(水)18時半開演、俳優座劇場
チケット:1000円(ジャンジャンシート)、座席:14列(最後列)11番 

 

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