高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   板橋演劇センター公演No. 100 『リア王』        No. 2017-023
 

板橋演劇センターが旗揚げ公演以来今年で37年、その公演が今回で100回目を数え、遠藤栄蔵演出によるシェイクスピア作品は板橋演劇センターと板橋区民文化祭及び演劇のつどいで合わせて80回となり、『リア王』公演は今回で5回目となるという、数字合わせのように符合している。
『リア王』の公演履歴を見ると、初演が1987年、続いて93年、98年、そして2008年となっていて、自分が初めて観たのは98年1月の第3回目、東京芸術劇場小ホールでの公演で岡本進之助のリア王だった。
岡本進之助は初演からリア王を演じ、98年の公演の時には70歳でその印象が今でも記憶に鮮明に残っている。
板橋演劇センターの舞台を観たのは、この作品が初めてで、それだけに印象が深いのかも知れない。
今回リアを演じた遠藤栄蔵は、初演ではケント伯爵、再演、再々演ではグロスター伯爵を演じており、前回の2008年の公演でリアを演じて、今回でリアを演じるのは2度目となる。
リアを演じた遠藤栄蔵にしても、周りを支えているケント伯爵の加藤敏雄、グロスター伯爵を演じた村上寿などの年齢を考えても、板橋演劇センターでこの『リア王』を上演するのは恐らくこれが最後になるかも知れないと思うと感慨深いものがある。
現に加藤敏雄は今年70歳を迎え、この『リア王』の舞台が最後になるかも知れないと述べている。
そのような年齢とは別に、今回の舞台はリアの迫真の演技だけでなく、演出でも遠藤栄蔵の斬新さを楽しむことが出来た。
道化が開幕から登場し、舞台上には舞台下手寄りにコーディリアがうずくまっており、道化は舞台中央で『十二夜』の道化フェステが歌った「雨は毎日降るものさ」を唄う。
道化は嵐の場面を最後にして消えてしまうのが普通だが、この舞台では最後の最後までリアに付き添っている。
ドーヴァーの場面にも登場し、ブリテンと戦って敗れてリアとコーディリアが捕虜となった時にも道化は舞台上手の袖近くから二人をじっと見つめており、最後は、殺されたコーディリアを抱いてリアが亡くなる時、傍にいてリアに自分の道化帽をかぶせ、そこで暗転して幕となる。
非常に印象的な終幕で、この所作でリアが道化の「影法師」であったかのような感じすら抱かせた。
殺されたコーディリアを肩に担いで登場するリアも意外な演出であったが、彼女を肩に担いだまま片方の手で彼女を殺した隊長の首を絞めながら登場してきたのには驚かされた。
全体を3分の2以下に縮めての演出であるが、それでもリアの台詞が膨大であるにもかかわらず台詞に一番力が入っていたのは遠藤栄蔵で、そこに渾身(魂心)の演技を感じさせた。
「不自由な体で芝居に出るのは10年ぶりだあ」という眞藤ヒロシが、片足を引きずりながら見事な道化役を演じたのも見どころの一つであった。
グロスターの村上寿、ケントの加藤敏雄には、「ご苦労様」と言ってやりたい。
エドガーには千葉泰祐、エドマンドには越前屋由隆の若手が元気に演じ、リアの3人の娘は、ゴネリルに藤本しの、リーガンに酒井恵美子、コーディリアに佐々木百花が演じ、総勢17名という大勢の出演であった。
板橋演劇センターには欠かせない鈴木吉行は、今回演出補として舞台には出なかったが、当日、ロビーでの案内役で開演前から終演まで付き合っていた。彼には次回公演の『ハムレット』の主演が待っている。
上演時間は、休憩なく2時間5分。

訳/小田島雄志、演出/遠藤栄蔵、5月12日(金)19時開演、
板橋区立文化会館小ホールにて、全席自由席

 

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