高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   日英語朗読劇シリーズ・第2回 『から騒ぎ』       No. 2017-021
 

「シェイクスピアを愛する愉快な仲間たちの会」(SAYNK)と「横浜山手読書会」共催、それに「横浜シェイクスピア・グループ」(YSG)協力による「シェイクスピア劇のレクチャーと日英語朗読劇」が順調に第2回目を迎え、今回は時間の配分もうまく収まり、内容も濃く、ピシッと引き締まったものとなった。
最初の30分間で、今回の朗読劇『から騒ぎ』のポイントを講師である瀬沼達也氏が要領よくまとめて聴きどころを押さえて解説された。
そのポイントについては当日配布された資料の中のレジュメに書かれているが、
1.気づくこと(認識すること)についての大騒ぎ
ということに関して、タイトルにもある'nothing'がキーワードで、それは劇中2幕3場のドン・ペドロとバルサザーとの会話の中で対になって出て来る単語'noting'(シェイクスピアの時代には'nothing'は'noting'と同じように発音された)=気付くこと(認識すること)から大騒ぎとなることを解説した上で、'nothing'という語が『リア王』のリアの台詞'Nothing will come of nothing'や、『マクベス』の'tomorrow speech'にも出て来て重要な働きをしていることを付け加えて解説した。
2.生と死(死んでから復活すること)
4幕1場で、濡れ衣を着せられたヒアローに神父が語る台詞'die to live'はキリストの復活のイメージにもつながることを語られた。
レクチャーの後10分間の休憩を取り、第二部の朗読劇では、瀬沼氏がシェイクスピアを演じて観客の気分をほぐしながら劇の進行・解説役を務め、自らもベネディクト、ドン・ペドロ他を演じた。
80分間という限られた時間の中で、第1幕第1場、2幕3場、3幕1場、4幕1場、5幕1場、5幕4場を選び、登場人物については原則同一人物については同じ出演者で演じたが、ヒロインの一人であるビアトリスのみは3人の女性(小嶋しのぶ、清水愛理、関谷啓子)が場面によって演じ分けたが、違和感はまったくなく、むしろ場面による特徴が出ていて、却って面白く聴くことが出来た。
各場面、英語を中心として一部日本語による劇読(演読)で、5幕1場のみは観客が英語に疲れたのを見越して日本語のみでの朗読という気の使い方で、今回はその配分も見事であった。
キャスティング面でも各人の持ち味がよく出されていた。
各自各場面の冒頭で自分の役名を名のるが、ドン・ジョンを演じる増留俊樹は、一言、「悪です」、またドグベリー役では「馬鹿です」とぶっきらぼうに、ぼそっと自己紹介するところが彼らしく、その役どころでも彼らしさを十分に楽しませてもらった。
クローディオとアントーニオを演じる細貝康太君、レオナートとボラーチオを演じる立花真之介君も、台詞に力があり、よく通る発声でうまさがどんどん進歩しているのを感じさせてくれた。
女性陣では、ビアトリスと小姓を演じたYSGでも長く活躍している小嶋しのぶさんは安心して聞かさせてもらい、同じくビアトリスと楽師を演じた清水愛理さんは、素晴らしい声で劇中歌を楽しませてくれ、演技力でも目が素晴らしかった。
使者とビアトリスを演じた関谷啓子さんの英語力は素晴らしく聴きごたえのあるものであった。
もう一人のヒロインであるヒアローは、遠藤玲奈さんが全部を通して可憐に演じた。
10年間でシェイクスピア全作品上演の夢が着々と進められており、年内には8月に『ヴェニスの商人』、10月に『ウィンザーの陽気な女房たち』、12月には『ロミオとジュリエット』の企画が早くも予定されている。

日本語訳テキスト/松岡和子訳、レクチャー講師・演出/瀬沼達也
4月29日(土)14時より、神奈川近代文学館・中会議室にて

 

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