高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   SPH第4回公演 『音楽怒劇アテネのタイモン』      No. 2017-019
 

昨年4月に旗揚げ公演したシェイクスピア・プレイハウス(SPH)の1周年記念公演は、シェイクスピアの作品の中でも最も人気のない作品として有名な『アテネのタイモン』に勇気ある挑戦。
シェイクスピアの作品は、基本的には(英国)史劇、喜劇、悲劇に分類され、ロマンス劇、問題劇としての分類を加えることが一般的となっているが、ホースボーン・由美は、独自に『コリオレイナス』、『リア王』、『アテネのタイモン』を「怒劇」と分類する。
ホースボーン・由美の一人芝居では、その3つの作品が三位一体に感じられるコンセプトを表出した演出で、それは演読する登場人物の抽出にも現れていた。
主人公のタイモンと無作法な哲学者アペマンタスの両者の関係は、リア王と道化を思わせ、ホースボーン・由美の声色の変化によって、アペマンタスはリアの道化そのものに聞こえた。
一方、戦功あるアテネの武将アルシバイアディーズのアテネ追放と、彼の復讐としてのアテネ侵略はコリオレイナスそのものであり、破産して自らアテネを出て海に近い森の洞窟に入っていくタイモンは、ゴネリルとリーガンの姉妹の処遇に対して怒り、嵐の荒野をさ迷うリアと二重写しであった。
この三者に共通しているのは、忘恩に対する怒りである。
一人芝居をタイモン、アペマンタス、アルシバイアディーズ、それにタイモンの執事フレーヴィアスを中心に演読し、その他の人物を人形の映像や声の出演で演じ分けることで、この劇のコンセプトが明確化されていた。
開演とともに登場したホースボーン・由美が、古い旅行鞄の中から人形を取り出し、舞台奥にセットされた台にそれらをびっしりと並べ、あたかもタイモンを追従する人物たちのように見せるが、その人形はその場に置かれたままで、タイモンに追従する詩人や画家、貴族たちの登場は、人形が映像として映し出される。
それらの人形提供はマダムゴマこと人形衣装作家の飯長有沙子、そして一人芝居のアクセントとして登場するダンサーに佐々木健、音楽担当としてミュージシャンの五十部裕明、プレイヤーの篁朋生らが、この一人芝居のコラボレーションをなして、小さな空間ならではの濃密な舞台を形成していた。
映像で静かに波が打ち寄せる海辺を映し出すのを背景に、佐々木健が妖精のような姿の衣装で登場し、力強く軽やかに踊る最後の場面は印象的であった。
小さな空間での斬新なアイデアでのシェイクスピア挑戦を楽しんでいるそのことに、共感と敬意を覚える。
演出を兼ねているホースボーン・由美は、キャストのコメントとして「不器用な自分には、継続は力なり、という言葉が支えとなっている」と記しているが、今後ともその継続を続けていって、シェイクスピア全作品上演にトライして欲しいものである。
これまで年3回のペースで進めてきており、今年もすでに7月に『テンペスト』、12月に『十二夜』の予定が組まれているので、シェイクスピア全作を37作として考えても12年を要するので是非「継続は力なり」を実践して欲しい。

上演に先立って別途オーダーとして、オリジナルのケーキ、サンドイッチと英国紅茶のアフターヌーン・ティータイムがあるが、その内容が凝っていて、上演作品にちなんだ食材が選ばれ、今回はアテネが舞台であるということで、ギリシアのヨーグルトを用いた菓子などが出され、観劇前から舞台の雰囲気へ誘ってくれる。
観劇だけでなく、時間に余裕のある人は是非、このアフタヌーン・ティータイムを味わってほしいものである。
今回の上演時間は、途中10分間の休憩を挟んで、2時間10分であった。

訳/小田島雄志、演出/ホースボーン・由美、
4月21日(金)14時開演(ティータイムは12時30分から)、
Shakespeare Tea Houseにて、観劇料:2000円(ティーセット付き:3000円)

 

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