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  SPAC公演、野田版 『真夏の夜の夢』              No. 2017-010

 2011年6月に"ふじのくに/世界演劇祭2011"以来、6年ぶりに観るSPAC公演の野田版『真夏の夜の夢』。
 前回の観劇イメージで残っている印象は、舞台を水平にしての疾走する場面と、舞台の奥行きの深さと垂直方向での高さの演技であったが、今回の印象として強く感じたのは空中的動きの中での長い間の静止状態を保っている姿であった。
 前回はSPACの舞台を観るのも初めてで出演者にもなじみがなかったが、今回はつい3週間前に同公演の『冬物語』を観たばかりなので、出演者にも見覚えを感じて親しみもその分だけ増して感じた。
 記憶としてはあまり信頼できず間違っているかもしれないが、前回、最後に「知られざる森」が燃える場面は舞台全体が燃えるように真っ赤に染まった印象であるが、それに対して今回は森が燃える前にメフィストフェレスの涙で消えるということで、ホリゾントの下の部分だけしか赤くなっていなかった。
 「知られざる森」が深層心理の暗黒の闇の部分の表象化され、野田秀樹潤色による過剰な言葉の洪水と宮城聡演出の疾走と抑制された所作の融合によって祝祭劇としての喜劇にパトスを感じさせる。
 前回も同じような感想を残しているが、結局この物語の主人公はヘレナである"そぼろ"の心の中の物語であることを今回も同じように感じた。
 発想として面白いのは、隠れ蓑の反対で、妖精たちの姿が見えるのは着ている衣装によってであり、それを脱いでしまえば見えなくなる。また、この話はそぼろの心の中の話であり、メフィストフェレスが見えるのは(或は話ができるのは)そぼろだけであり、彼女が思っていることを途中で口に出すのを止めたことをメフィストフェレスが溜め込んで、それが顕在化した話がこの物語の展開となっている。
 出演は、そぼろに本多麻紀、ときたまごに池田真紀子、板前デミに大道無門優也、板前ライに泉陽二、割烹ハナキンの主人に大高浩一、福助に小長谷勝彦、オーベロンに貴島豪、タイテーニアにたきいみき、パックに牧山祐大、メフィストフェレスに渡辺敬彦、他、出入り業者や妖精たち役で多数出演。
 上演時間は、休憩なしで2時間10分。

 

潤色/野田秀樹、演出/宮城 聡、音楽/棚川寛子、舞台美術デザイン/深沢 襟、
2月25日(土)14時開演、静岡芸術劇場、
ゆうゆう割引チケット:3400円(シニア)、座席:L列15番

 

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