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  タイプス第82回プロデュース公演 『マクベス』      No. 2017-005

庄田侑右のマクベス X 大竹一重のマクベス夫人

 昨日のカクシンハン版『マクベス』に続いて2日続けての『マクベス』観劇となった。
 タイプス公演の『マクベス』はこれまでにもいくつかのバージョンで観てきているが、庄田侑右と大竹一重がマクベス夫妻を演じる『マクベス』は、2012年のタイプスの第50回公演でも観ているので、どのように進化(深化)しているか、その変化にも興味があった。
 主役以外のキャスティングはほとんど変わっており、前回も出演し、ダンカン王を演じた新本一真は今回バンクオーを演じているが、その他の出演者は入れ替わっている。
 今回は門番の登場する場面が省かれていたのも前回とは大きく異なっていた。
 タイプスのシェイクスピア劇ではダンスを融合させての演出が通常の姿となっているが、今回はその融合のマッチングが効果的でこれまで以上によくできているように感じた。
 男と女の一組のダンサーによって舞台が始まるが、その二人の踊りはマクベス夫妻の運命を予兆するかのようなダンスを繰り広げ、それが終わると3人の魔女たちが、舞台中央の階段状になった祭壇のようにも感じられる台座の陰から現れてくる。
 カクシンハンの魔女たちとは異なり、いかにも魔女魔女しい面妖と姿態で、正統的な感じの魔女である。
 この魔女たちは、マクベスの運命を操るかのように劇の進行の折々に舞台上によぎって現れる。
 マクベス夫人が手紙を読む場面は、書斎机の前に座ってワインを置いてそれを時々飲みながら読むという、これまでに見たことがない演出に新鮮さを感じた。
 マクベス夫人の衣装は前半が淡い鶯色で、後半マクベスが王位についてからは純白の衣装で、大竹一重のイメージを清楚なものにしていた。
 ダンカン殺害の後、腕まである赤い手袋をはめたダンサーの愛-MEGUの踊りの場面は象徴化されたイメージで想像力を増幅させ、その見事さに見入った。
 パク・バンイルの演出の『マクベス』ではこれまでにもあったが、原作にはない場面でのマクダフ夫人親子を登場させる場があるが、今回はダンカンの一行と共にマクベスの城を訪れる時に、マクダフと一緒に赤ん坊と少年を連れて登場させることで、その後に生じる悲劇と対照をなす明るい雰囲気を作り上げるという効果をあげていたと思う。そのマクダグ夫人を演じているのは、タイプスの公演でマクベス夫人を演じたことのある田中香子。
 5年ぶりに大竹一重とのマクベス夫妻コンビを組んだ庄田侑右は重厚さが増して感じられた。
 陰のマクベス夫妻ともいえるダンサーの愛‐MEGUと千-KAZUのカップルのダンス、そして佐々木健のソロのダンスはともに陰の主役に感じられるほど強いインパクトのあるもので惹きつけられた。
 その他の出演としては、ダンカン王を演じた調布大は貫禄のある力強い台詞がベテランの力を感じさせ、3人の魔女には、森下友香、山田かな、瑠央じゅん、マクダフに砂押正輝、マルカムに滝沢亮太、ロスに関洋甫などが演じた。
 この日は、土曜日のマチネということもあってか、満席状態の盛況で、舞台が熱く盛り上がっていた。
 上演時間は、途中休憩10分間を挟んで2時間15分。


台本構成・演出/パク・バンイル
1月28日(土)14時開演、座・高円寺2、チケット:4500円、全席自由

 

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