高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   カクシンハン第10回公演 『マクベス』     No. 2017-004
 

衣装、小道具などはシンプルながら、スケールの大きさと自然体の遊び心を感じる舞台であった。
その衣装については、マクベスが黒、マクベス夫人が赤、その他の登場人物はすべて白の身体に密着したレオタードであった。
小道具は、折り畳み式のパイプ椅子を自在に使って武器などを表象し、荷物運搬の台車を玉座として使う。
マクベス夫人を演じる真以美の気合の入れようは、マクベスを演じる河内大和との夫唱婦随を意識してか、驚いたことに頭をスキンヘッドにしていたところにも現れているような気がした。
マクベス夫妻以外は、全員が魔女役を務め、このキャスティングをチラシで見た時、最初に感じたのはマクベス夫妻が魔女たちに踊らされる存在としての演出かと思ったが、そうではなく、魔女たちはコーラスとしての存在に感じられた。
開演とともに白い衣装の一群が上手、下手からパイプ椅子を持って激しく戦闘シーンを繰り広げた後、全員が椅子にもたれかけて倒れ伏す。
マクベスとバンクオーが登場する場面では、この白の一群の一部が馬の役を演じ、二人はあたかも馬に乗っているかのように体を上下させて会話する。
二人の前に現れる魔女たちは、白い衣装の一群全員で、バンクオー役の白倉裕二が観客全員を魔女役として参加させ、舞台と観客との一体感を持たせるのに努める。
この白倉裕二が、茶目っ気たっぷりな演技と台詞回しで、裸になっての肉体美を誇示して自ら楽しむ遊び心を発揮し、ダンカンが殺された場面では、「裸同然の姿」という台詞そのままに褌一丁の姿で現れ、マクベスの前に亡霊として現れる場面では、顔半分を真っ赤に血染めにして女子高生の制服姿でスマホ片手に登場し、マクベスと腕を組んでステップを踏んで楽しんだりする。
また、彼がマクダフ夫人の息子の少年役を演じる場面では、ティッシュを丸めて鼻に詰め、それを吹き飛ばして遊ぶ一方、母親に向かっては大人のような口を聞くませた小生意気な役を演じる。
『マクベス』では特定の者の目には見えて、他の者には見えないものがいくつか登場するが(魔女もその一つであるが)、ダンカンを殺す前にマクベスが見る幻の短剣はその最たる例だが、この演出ではこの場面を出さず、代わりにダンカン殺害の場面を可視化し、その情景を見た後でダンカン殺害へと向かう。
使用される音楽にも特徴があったが、ここにも遊びがあって、マクベスが王座に就いた時の曲は、なんとテレビアニメ「サザエさん」のテーマ音楽が流れ、思わず笑ってしまった。
アニメのパクリでは、マルカム軍とマクベスとの戦闘場面にマルカムの弟ドナルベインが逃亡先のアイルランドから駆けつけて戻って来るという原作にはない演出をしているが、彼はドラエモンのタケコプターを頭に付けて飛んで帰ってくるという遊びを入れている。
観客席の前列2つを外して平土間を広く取り、真以美が演じるマクベス夫人が舞台上で演技が進行している間、その平土間でずっと手をこすり合わせる所作を続けていたのも真新しい演出として印象に残った。
カクシンハンの舞台では、これまで小さな劇場でもダイナミックな動きが特徴となっているように思うが、一段と広くなった今回の舞台ではより一層そのダイナミックさを感じた。
この演出ではマクベス夫妻を演じる河内大和と真以美と、バンクオーを演じる白倉裕二が主役をなしているが、ロスを演じる岩崎MARK雄大、門番ののぐち和美、それにマクダフ夫人の葛たか喜代なども印象に残る演技を見せてくれた。
上演時間は、休憩なしの2時間25分。

この日は終演後、ゲストに吉田鋼太郎が招かれ、演出の木村龍之介、出演者の岩崎、白倉、真以美、河内、阿久津紘平(アンガス役と演出助手)らが参加して、のぐち和美の司会進行でアフタートークがあった。
吉田鋼太郎の演出者の立場としての発言の主な要点をあげると、魔女の演出をどのようにするかが最初の難問であることと、マクベス夫人に子供がいたのかどうか、いたとしたら彼女はマクベスと再婚であるのかどうかなど、基本的な疑問について語られた。
演出者の木村龍之介もその点に留意しての演出で、今回はすべて原点に戻って自然のままの状態で臨んだことを語り、それが小道具のパイプ椅子の使用などで表したということであった。


翻訳/松岡和子、演出/木村龍之介、1月27日(金)14時開演、
東京芸術劇場・シアターウェスト、チケット:4500円、座席:D列11番

 

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