高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   東京シェイクスピア・カンパニー(TSC)公演 『メヂャメヂャ』   No. 2016-057
 

衝撃的問題作 Measure for Measure

昨年11月にノーカット版での朗読公演があり、その本公演を待ち焦がれていたが、ちょうど1年後にその願いがかなった。朗読劇では『魚心あれば水心』というタイトルであったが、本公演で『メヂャメヂャ』と題したことについては「メジャー・フォー・メジャー」の原題の音に、「メチャメチャ」を掛け加えたようなタイトルとしていることに演出の底意を感じる。
朗読劇とは異なる演出としては、冒頭部と終わりの部分に立体的に現れていた。
開演とともに最初に登場してきたのはクローディオと身重のジュリエットの二人、そして舞台最期の場面で公爵は語り終えた後観客に背を向け、体を十字の形にするかのように両手を広げると、舞台はストップモーションのように動きを止めここで終わりだと思わせるが、しばしの沈黙の後、ジュリエットが最初に登場してきた場所から現れて来る。その姿は見た感じでは身重の姿ではなく、複雑な表情をしており(そのように見えた)、そのまま終わったのが印象的であった。
朗読劇では9名の出演者であったが、この本公演は12名の出演と増え、その半分の6名が朗読劇にも出演し、残り6人が新たに加わっている。
公爵のかなやたけゆき、エスカラスの江戸馨、アンジェロと死刑執行人フリンギライ役の真延心得の3人は朗読劇と全く同じ役を務め、朗読劇でジュリエットや警吏エルボーなど5役をした川久保州子はマダム・オーバーダンやピーター神父など3役、看守とマリアナ役をした森由果はマリアナと司法官、ポンピーとクローディオを朗読した中崎たつやはポンピーとトーマス神父などに訳を一部変え、ヒロインのイザベラは朗読劇でのつかさまりから新たな参加の若松絵里に変わり、ルーシオは田山楽から宇佐美雅司、クローディオにはMSPのOB丸山港都、看守に劇団AUNの星和利、警吏エルボーと死刑囚バーナダインには紺野相龍、シスターアイリーンやフレイビアスに松山亜衣が演じた。
TSCはいわゆる劇団とは異なり専属の劇団員がいるわけではないので、かなやたけゆきのような常連もいれば、その都度新たな人材を募ってキャスティングするということで、自分にとっても新たな人材に出会えるという歓びを味わうことが出来る。
それなりに長く継続的に観続けてきたこともあって、昔から観てきている俳優に久しぶりに出会えるのも嬉しい。
今回では、星和利がその人であり、役柄を見ると看守となっていたので、たいした出番もないかと思っていたが、かなりの登場があり、その台詞力に存在感を感じさせ、期待通りに楽しませてもらって嬉しく思った。
自分にとっては全くの初顔であるイザベラを演じた若松絵里には新鮮な出会いを楽しませてもらった。
最後の問題の場面である公爵のプロポーズに対しては、完全に背を後ろに向けてしまい、その表情を見せないままにして、拒絶なのか、恥じらいからなのか分からないような素振りであったが、これは結論が見えるようにするよりもずっと良いと思うので、非常に印象的でよかったと思った。
演出者江戸馨の言葉にあるように、この作品は究極の問題劇といってもよい程の問題を抱えているので、劇の進行に従って公爵の行動や台詞から、なぜ、どうしての問題が次から次へと沸き起こって来るが、観る側からするとその湧き上がって来る問題を自分の中で反芻し、自分で解いていくという楽しみがあり、それを十二分に楽しませてくれる演出であった。
シェイクスピアの他の作品の台詞、場面を彷彿させるものがいくつかあり、その中で最も印象的に感じたのは、『から騒ぎ』のドグベリーをすぐに思い出させた紺野相龍の警吏エルボー役であった。
多種多彩な出演者の演技を大いに楽しんで観ることが出来た。
上演時間は、休憩なしの2時間10分。

(訳・上演台本構成・演出/江戸 馨、12月3日(土)14時開演、
新宿・SPACE雑遊、チケット:3800円)

 

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