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  Shakespeare Play House 第3回公演
         音楽朗読芝居 『マクベスの個人的な悲劇』       
No. 2016-056

 シェイクスピア没後400年を記念してのSPH公演は、演出者のホースボーン・由美がSPHを立ち上げようとしたきっかけとなった作品で、高校3年生の時の文化祭で演出、上演し、昨年、ニューヨークのオフ・ブロードウェイでこの作品をモチーフにした"Sleep No More"に出会って刺激され、記念イヤー最期を飾る上演作品として『マクベス』を選んだという思い入れがこもったものであった。
 その思い入れが、単に『マクベス』ではなく『マクベスの個人的な悲劇』というタイトルに表され、個人的な思いが込められているように感じられる。
 「音楽朗読芝居」という趣向は、3人の魔女の台詞を音楽にのせて歌って表現され、ヘカテが登場する場面はラップ調で朗読されるが、その外の台詞普通の朗読形式であった。
 朗読は、東野遥がマクベスとマクベス夫人、3人の魔女の一人を演じる中島大地がバンクオーをはじめとして複数の役、青田恵兎がマクダフ他多数、サックス演奏者の冨岡峻佑がダンカンほか、そしてヘカテを演じるのは劇中でコンテンポラリーダンスを踊る佐々木健が、それぞれの役割を朗読し、音響、照明は作曲も手掛ける五十部裕明が担当。
 魔女の台詞回しでは、SPHのトレードマークでもある「猫」を模した「にゃんにゃん語」を織り交ぜ、魔女、ヘカテは猫のお面をかぶっての朗読。
 主演の東野遥の舞台活動歴を見ると、アメリカにおける英語版での出演と演出助手となっていたので、英語でのTomorrow Speechを聴いてみたいと思った。
 中島大地、青田恵兎の二人は前回の『夏の夜の夢』でそれぞれオーベロンやボトムなど演じていたが、台詞力もしっかりしていて、これから先もSPHを盛り上げていくことを期待したい。
 カットの場面も少なく、朗読で耳を楽しませるだけでなく、コンテンポラリーダンスなどで目も楽しませてくれ、上演時間も途中休憩を含めて2時間40分という熱演であった。
 小さな小屋でアットホームな雰囲気での舞台は、演じる出演者が心から楽しんでやることでその心が観客に伝わって観客も一体となって楽しむことが出来る、というところが素敵である。
 観客との一体感という点では、休憩時間中に、出演者の友情出演で、二人の女性が英語で、「ルパン三世」とジャズを歌って楽しませてくれたのも一興であった。
 喫茶店という利点を活用してのアフターティセット付きチケットが3000円、観劇のみでは2000円という料金設定もお手頃で、特に、この店ご自慢の英国仕込みのティーと茶菓セットはお得で、お薦めである。


訳/小田島雄志、演出/ホースボーン・由美
12月2日(金)13時30分開演、玉川学園前 Shakespeare Tea House

 

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