高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   新宿梁山泊・満天星シェイクスピアシリーズ Vol.3 『マクベス』    No. 2016-052
 

マンションの地下を利用した劇場で、入り口から入ると地下2階であるが、舞台奥の非常口に相当する場所は地上に面しているという奥行きのある空間を有効に活用した舞台装置にいつもながら感心させられる。
『マクベス』は元々短い部類の作品ではあるが、それをさらに圧縮して90分で演じることで、スピード感と濃密さを感じさせてくれる舞台であった。
第1幕の1場と2場を省略し、第3場での3人の魔女登場の場から始まる。
舞台の一番奥には、中央部に皓々と輝く満月、それが舞台の状況に合わせて血の色をした満月に変わる。
3人の魔女たちは、黒い蝙蝠傘をさして踊るようにして舞台奥から登場してくる。
魔女たちの台詞は、小道具を奔放に使って具象的、即物的に演出され、例えば、難破した船乗りの親指なども実際に袋から取り出して見せたりする。
マクベスとバンクオーが登場する前に魔女たちは蜘蛛の巣を張り巡らし、マクベスがそれに絡まって驚く表情を示すが、この仕掛けはマクベスが魔女たちの罠にかかった表象として面白い演出だと思った。
マクベスとバンクオーが登場し、魔女たちが後方に引き下がったその背後には、いつの間にか、人の大きさもある大きな手の張りぼてがでんと座している。
この手は、見ようによっては、マクベスの栄枯盛衰も孫悟空が仏の掌で踊らされていたに過ぎないという比喩と同様なものとして受け取れる。
奥行きのある空間を活用して、舞台を二重に仕切り、舞台奥側の紗幕と、舞台前方に黒幕を使用することで、場面転換での舞台装置を素早く入れ替えるという効果を出している。
ダンカン殺害の前の幻の短剣は、魔女たちが身を隠して城壁の窓から短剣を繰り出すという演出で、このように魔女たちは絶えず舞台に登場し、仕掛け人となったり、傍観者として成り行きをじっと見つめていたりすることで、この舞台での中心的な役割を担っている。
出演者の数、キャスティングの制約もあってかっどうかは分からないが、マクベスが催す宴会の場では、マクダフ夫妻が参席していたのも注目すべき点であった。
そのマクダフの城が襲われる場面では、マクダフの子供が小鳥の入った鳥かごを持って登場するのも、具象的な演出の好例でもあった。
マクベス夫人の死の場面では、舞台奥を解放して、白い寝衣姿の彼女が観客席に背を向けて下に落ちる光景を具体的に見せる。
バーナムの森が攻め寄せてくる場面は、紗幕に森の映像を映し出すなど、随所に映像効果を取り入れていた。
門番登場場面では、台詞そのものの面白さより、腹に福笑いのような誇張した人の顔を描いてそれでもって腹芸をするという見世物的、肉体演技をもって観客の笑いを誘う。
マクダフとマクベスの一騎打ちの後、最後の場面はマルカムの登場もないままマクダフが倒れてうつぶせの状態になったマクベスの首を掴んで、スコットランド国王万歳と叫び、特に何かを予兆させるような特別なひねりもなく終わりとなる。
出演は、マクベスに申大樹、マクベス夫人に水嶋カンナ、ダンカンに金守珍、バンクオーに松田洋治、マクダフに広島光、マクダフ夫人に渡会久美子、マルカムに小林由尚、3人の魔女には、三浦伸子、佐藤梟、藤井由紀など。
仮にこの舞台の出演者に賞を与えるとしたら、マクベスとマクベス夫人の好演を飛び超えて、今回は3人の魔女たちを選びたい。
新宿梁山泊30周年記念となる来年の満天星シェイクスピアシリーズは、『オセロ』と早くも決定している。

 

(訳/小田島雄志、演出/金守珍、美術/宇野亜喜良、11月25日(金)19時30分開演、
芝居砦・満天星にて、チケット:3800円、全席自由席)

 

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