高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   第13回 明治大学シェイクスピアプロジェクト(MSP)公演 「夏の夜の悪夢?」 No. 2016-051
 

第一部 『夏の夜の夢』 第二部 『二人の貴公子』

2013年の第10回公演『ヘンリー四世』二部作の一挙上演、第11回『道化と王冠』(『ウィンザーの陽気な女房たち』と『ヘンリー五世』の合作)、第12回『薔薇戦争』(第一部『ヘンリー六世・三部作』と第二部『リチャード三世』)と、3年続けて複数の作品を一つにまとめて上演してきて、今回は『夏の夜の夢』と『二人の貴公子』という非常に珍しい、というより初めての組み合わせで、そのユニークな着眼点、着想に大いに興味をそそられ、1年前の予告からその公演を楽しみにしていた。
そして、その観劇の結果は、期待を上回って楽しむことができただけでなく、強く感動させられた。
この二作の共通点は、登場人物のシーシアスとヒポリタの二人以外には特にないだけに、二つの作品をどのように結び付けて演出するかという点に焦点は絞られてくるが、その結びつけの見事さに感心した。
『夏の夜の夢』は2010年の第7回公演で一度上演されており、このとき初めてこのプロジェクトの公演を観て、大変感激し、それ以来毎年欠かさず観てきただけでなく、それを楽しみに毎年待つようになった。
第一部の『夏の夜の夢』では、シーシアスとヒポリタの婚礼の式が終わって、これから饗宴に入ろうとする矢先に、テーベの3人の王妃たちが喪服姿で登場し、テーベの王クレオンに滅ぼされた夫たちの埋葬を許さず野ざらしのまま放置させている暴君クレオンを倒してくれとシーシアスに哀願するが、躊躇する彼は、ヒポリタとその妹エミリアの懇願によってテーベを攻めることを決意する。
ここで第一部が終わるので、アテネの職人たちの『ピラマスとシスビーの悲劇』の劇中劇は省略されるものと思っていたが、第二部の終わりの部分で演じられ、その見事な構成に感じ入った。
第一部と二部のつなぎ役はシーシアスとヒポリタであるが、第一部で活躍した妖精パックも第二部の要として、劇中進行を見守る傍観者であるだけでなく、登場人物の一人である医者に変装してその役を演じ、この劇の連関性を持たせている。
第二部の『二人の貴公子』は、これまでシェイクスピアの作品として取り扱われてこなかったという経緯もあって、日本でも上演されることがなかっただけに、この劇が上演されるというだけでも興味のあることであった。
『貴公子』の原作には結婚式のパーフォーマーとしてハイメンや妖精たちの登場もあるが、『夏』の妖精たちがここでも登場して、二つの作品の有機的な結びつけとなっていた。
『貴公子』の主筋は、テーベの王クレオンの二人の甥で従弟同士のパラモンとアーサイトが、シーシアスのアテネ軍に敗れて囚われの身となり、牢獄から見えたヒポリタの妹エミリアに一目惚れし、彼女をめぐって二人が争うことになり、アーサイトが勝利してエミリアを勝ち取るが、彼女から報奨として得た馬が落雷に驚いて暴れ出し、乗っていたアーサイトが振り落とされ死ぬことになるが、死ぬ間際にエミリアをパラモンに譲り渡す言葉を残す。
一方、副筋として牢番の娘が牢獄にいたパラモンを恋し、彼を逃亡させたものの行方を見失い、ついには気が狂ってしまうが、狂乱の彼女が歌う姿は『ハムレット』のオフィーリアそのものを感じさせる。
ヒーローの一人が死ぬという点に関しては悲劇であるが、もう一人のヒーローが念願のヒロインと結ばれるという点では喜劇の部類に入る。
この結びの喜劇的部分で、『夏の夜の夢』と『二人の貴公子』の二つが一つとなって5組のカップルができ、結婚式の余興の場へと移り、アテネの職人たちの劇中劇が演じられる。
劇中劇が終わった後演じられる道化踊りは、アテネの職人たちだけでなく舞台上の全員の踊りとなって、観ている側にもその感動が押し寄せる波となって伝わってきて、感極まった。感動!感動!!感動!!!
その感動的な場面から一転して、最後はパックのエピローグの台詞で締められ、拍手の渦となる。
この劇では、最初に登場してきたシーシアスを演じる横道勇人君(情コミ4年)の朗々とした台詞力のすがすがしさにまず聞きほれた。
パック役の小坂優さん(文3年)の眼の周りのメイクは、片方が赤、片方が青の十字型を描いて道化的な要素を持たせていたが、衣裳は純白で意外性を感じたが、エピローグの台詞ではその清純な姿がとても印象的で効果的な気がした。
演技や台詞力、出演者全員素晴らしく、一人一人の感想を紹介したいが大人数の出演でそれも無理なので、特に印象の強かった役柄で紹介すると、クールな表情でホットな演技で楽しませてくれたハーミアの谷口由佳さん(文1年)、ヘレナの小川結子さん(文2年)、そして役柄として儲け役のボトムを演じた武藤雄太君(情コミ1年)、劇中劇でシスビーを演じるが女性役とは対極的なフェイスと所作を演じるフルート役の諸星福次郎朗君(法4年)などは、本人のキャラクターとキャスティングの妙味が垣間見えて面白かった。
アテネの職人たちは、出演者の関係もあって女性がその一部を演じること自体それほど珍しくもないが、今回はクィンスに峰村美穂さん(国日3年)、スナウトに川島梨奈さん(文1年)が演じていた。
例年だと、見覚えのある出演者の確認で過去のプログラムを引き出して来て比べてみるのだが、今回はそんなこともせず、プログラムのキャスト紹介のコメントだけで十分な気がした。
舞台出演者だけでなく、この劇がかくも盛大に、そして成功しているのは、それを支える制作部のスタッフの協力があってのことだと改めて感じた。特にワークショップ講師として参加したOBの中西良介君は、つい先日、新国立劇場小劇場で『ロミオとジュリエット』に出演していたのを観たばかりでもあり、このプロジェクトの出身者がこのように次々と活躍の場を広げていっているのも嬉しいことであった。
この舞台の楽しみは、自分も一体となったような感じで昂揚感があり、最後の感動を共有できるところにある。
そして、例年のように、早くも来年の公演の作品、『トロイラスとクレシダ』が紹介されている。
今から、楽しみにしている。

 

(翻訳/コラプターズ(学生翻訳チーム)、プロデューサー/小関優生乃(文学部2年)、
演出/上岡福音(文学部4年)、監修/青木豪、11月12日(土)12時開演の部、
明治大学駿河台キャンパス、アカデミーコモン3Fアカデミーホール、
座席:(Aブロック)最前列中央部の席にて観劇)

 

>> 目次へ