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  ブラナー・シアター・ライブ 『冬物語』              No. 2016-049

ケネス・ブラナーのレオンティーズ X ジュディ・ディンチのポーリーナ

 3時間があっという間に過ぎた。特に前半部の1幕は早かった。それほど舞台(映像)に集中して見入っていた。
 レオンティーズとボヘミア王ポリクシニーズの幼いころの思い出話は、その場に作り出された小さなスクリーンに、映像として映し出されるというこれまでにない面白い趣向であった。
 ポリクシニーズの滞在を引き延ばすことに成功したハーマイオニ、突然に嫉妬するレオンティーズ、ハーマイオニの裁判、パーディタをボヘミアに捨てたアンティゴナスが熊に襲われ、羊飼いと道化が捨て子のパーディタを拾うまでの展開が切れ目なく続き、本当にあっという間に過ぎた。
 ポーリーナを演じるジュディ・ディンチとシチリア王レオンティーズを演じるケネス・ブラナーの台詞と演技を心ゆくまで堪能することができた。特にジュディ・ディンチはこの舞台の主役的存在で、レオンティーズの一人息子マミリアスの遊び相手として開幕早々から登場するだけでなく、2幕の始まりに登場する「時」の役をも演じる。
 そのジュディ・ディンチの演技(台詞力)の中で特に感動的だったのは、裁判の場でハーマイオニがマミリアスの死を聞いて失神し、そのまま死んでしまったことをレオンティーズに告げる場面では、思わず涙が出てしまったが、この場面で泣いたのは初めてであっただけに強い印象であった。
 『冬物語』でいつも感動的な気持で涙するのは彫像のハーマイオニが動き出す場面であるが、この舞台(映像)も例外ではなかった。
 大きな人形ケースに収められたようにして立っているハーマイオニの彫像姿は、ギリシア彫刻を思わせるような優美さで、腕を心持ち伸ばし、掌を弥勒菩薩の指のような形をして上向きに開いていた。本物の彫像のような立像が長い間そのままの状態で全く動かずにいるだけに、それが動き出す瞬間は感動的であった。
 このスピード感は、実際の舞台ではなく映像で見たせいかも知れない。
 舞台上演は、2015年、ロンドンのギャリック劇場で、ケネス・ブラナー・シアター・カンパニー。
 出演は、ケネス・ブラナー、ジュディ・ディンチのほか、ポリクシニーズにハドリー・フレイザー、カミロにジョン・シャープネル、ハーマイオニにミランダ・レイソン、パーディタにジェシー・バックレィ、フロリゼルにトム・ベイトマン、オートリカスにジョン・ダグレッシ、アンティゴナスにマイケル・ペニントンなど。
 上演時間は、途中20分間の休憩を挟んで、3時間。

 

演出/ロブ・アシュフォード、ケネス・ブラナー、
11月6日(日)TOHOシネマズ日本橋、料金:3000円

 

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