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  新国立劇場バレエ公演 『ロミオとジュリエット』           No. 2016-048

 バレエを生の舞台で観るのは初めてだが、物語そのものは舞台でも数え切れないほど観てきているので、当然と言えば当然の事かも知れないが、言葉がなくともこれほど分かりやすいとは思いもしなかった。
 マクミラン振付のバレエ『ロミオとジュリエット』については、一度は見てみたいと思っていたが、思っていた以上に素晴らしいものであった。
 全体の構成は3幕となっていて、第1幕は第1場が「街の広場」、第2場が「キャピュレット家~ジュリエットの部屋」、第3場が「キャピュレット家の前」、第4場が「舞踏会」、第5場「キャピュレット家の前」、第6場「ジュリエットの寝室のバルコニー」、そして25分間の休憩の後、第2幕第1場「街の広場」、第2場「礼拝堂」、第3場「街の広場」、20分間の休憩の後、第3幕第1場「寝室」、第2場「教会」、第3場「寝室」、第4場「キャピュレット家の地下墓」となっていて、休憩も含めて3時間10分の上演時間で、休憩時間が長いので思ったより長時間であった。
 バレエであるだけに、「街の広場」と「舞踏会」での踊りの場面が見せ場となっていて、観ていても楽しかった。
 最初の「街の広場」でのモンタギュー家とキャピュレット家の両家の者たちの剣を使っての争いの場面は圧巻で、面白いと思ったのは、原作にある通り、若者たちは細身の剣、モンタギューとキャピュレットの二人は旧世代を象徴する諸刃の大剣を用いていたことである。
 ロミオに殺されたティーボルトの死を嘆くキャピュレット夫人の慟哭する場面と、背後で無言のまま立ってそれを見守る大公の姿はこの物語を知っている者には、大公の無言の姿からロミオの追放の罰の宣告をひしと感じ、その追放の言葉がないだけに強い印象を感じ取った。
 台詞がないだけにバルコニーシーンがどのように演じられるのかも興味があったが、これはジュリエットが2階のバルコニーから下の庭に降りて来て二人の踊りで表現された。
 最後の場面では、ロレンス神父の登場も、大公やそのほかの人物の登場もなく、ロミオの服毒自殺、その後を追って短剣で自害するジュリエットの死で終わり、両家の和解の場面もない。
 二人の死体にスポットライトが当たって終わることで、この悲劇の悲しみの余韻が、美しいものとして一層強い印象を残していた。
 バレエのことをまったく知らない自分にも、その華やかな美しさに心を魅せられる場面が多くあって楽しむことが出来、機会があればまたバレエ公演を観てみたいと思った。

 

振付/ケネス・マクミラン、音楽/セルゲイ・プロコフィエフ、指揮/マーティン・イェーツ、
装置・衣装/ポール・アンドリュース、10月30日(日)14時開演、新国立劇場オペラハウス
チケット:(C席)4104円(シニア割引)、座席:4階1列33番

 

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