平日のマチネにもかかわらず、劇場はほぼ満席で、しかも女性客が大半。自分の前の席4列は全員女性であったので、全体でもほぼ9割近くが女性であったと思う。
自分にとって少し場違いな感じがしたのは女性客の多さだけでなく、開演前、舞台上で数人の若い俳優たちがストレッチや軽いウォーミングアップしている合間に、ゲームめいたアクションをするのを見て若い女性たちが笑い声を立てていたが、何がおかしいのか、少しも分からなかったことにもよる。
開演前のネガティブな印象が影響して、舞台が始まった当初、アクションに劇画的な擬音をバックから流しているのを聞くと、余計に場違いな舞台を観ている気がしたが、それでもだんだんと引き込まれていった。
舞台構成は物語の構成上、前半部のイメージは暗く、アーデンの森の場面に入ると、明るいモードに入る。演じるのはすべて男優、オールメールキャストである。
オールメールキャストは、これまで自分にとってあまり満足した舞台を観たことがないので、多少の不安があったが、この舞台ではその心配を払いのけてくれた。
女性を演じるのに女性らしさを強調するような媚のある演技が嫌いであるが、ロザリンドを演じる前山剛久、シーリアを演じる西井幸人もその嫌いを感じず、むしろ好ましい印象を持った。
特にロザリンドの場合、劇中で男性に変身するので、女を演じる男が男になって、しかも女らしさを出す必要があり、そこが見どころでもあるのだが、その演技を楽しんで観ることが出来た。
その見どころの一つに、彼の兄オリヴァーが、ライオンと格闘して腕に傷を負ったローランドの血が付いた布切れを見せた時、ロザリンドは気を失って倒れ、オリヴァーが助け起こすが、その際に胸を触ってしまう。
オリヴァーは思わず引き下がり、ロザリンドも一歩引いてしまうが、その後、二人とも何食わぬ顔をしてそのまま過ごす、その時の二人の所作は見ものであった。
変身ということに関しては、総勢12人出演の内、8人までが2役するが、その変身に気づかないほどのものがあって、それも見どころであった。
フレデリック公爵を演じる松尾貴史は前公爵も演じるが、衣裳を変え、メガネをかけただけでそれとは気づかなかったし、オリヴァーを演じる三上真史がコリンを演じたのも同じ人物だと思わなかった。
また、ル・ボーを演じた遠藤雄弥のオードリー、マーテクスト(牧師)を演じた山田悠介がフィービーを演じたのも、チラシでキャスティングを確認するまで分からなかった。
対称的な役柄としての2役ではレスラーのチャールズを演じる加治将樹のジェイクイズ、味わいのある2役では石田圭祐のアダムとウィリアム。
オードリーと結婚しようとする年老いた姿のウィリアムを演じて、年齢を問われて25歳と答え、何度問い返されても同じ歳を繰り返す、そのとぼけた演技が面白い。
その石田圭祐のアダムは、最後の場面で、フレデリック公爵がアーデンの森に攻めて来て途中隠者と出会い、それまでのことを悔い改め、兄に公爵領を返し、本人は隠遁生活をするという報告をするが、この役は本来オーランドの次兄ジェイクイズがするのであるが、そこを原作から変えていた。
その他のキャストでは、アミアンズを演じる鈴木壮麻の劇中での歌唱が素晴らしく、聞きほれた。
祝祭的な、楽しい雰囲気を過ごすことが出来た舞台であった。
上演時間は、休憩なしで2時間20分。
翻訳/松岡和子、演出・上演台本/青木豪
10月18日(火)14時開演、下北沢・本多劇場、
チケット:(召しませシート)6000円、座席:E列21番
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