高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   ペンブルック劇団来日公演 Romeo & Juliet         No. 2016-040
 

成蹊学園が英国ケンブリッジ大学ペンブルック劇団を迎えての公演は、今回10周年を迎えるという。
その記念すべき年に『ロミオとジュリエット』が上演された。
演出家ノートに、演劇における性別の平等性に基づいて、女性5名、男性5名の俳優の出演と、モンタギュー家、キャピュレット家の一族をまとめる家長をそれぞれモンタギュー夫人、キャピュレット夫人に融合し、大公の役割をパリスが担い、ジュリエットの恋敵でもある彼が、ロミオに追放を言い渡すことになるということが書かれていたことに興味が湧き、かなり期待して観た。
衣裳も若者が身に着ける現代服で、舞踏会のシーンもポップ音楽を用いた現代のパーティ形式となっていて、観客サービスも兼ねてか、このシーンは全体の中でもかなりの比重をかけていたように思われた。
開演とともに出演者全員が舞台上に登場し、冒頭のプロローグの台詞の場面になると、序詞役が一歩前に進み出て、その他の出演者は後ろ向きとなる。
序詞役を務めるのは、モンタギュー夫人を演じる黒人女優のローラ・オルフェミ。
大公を務めたパリスはロミオと闘って死んでおり、エピローグともいえる大公の台詞も彼女が語ることで、この物語の輪を結ぶことになる。
女性と男性の出演者を平等にしている関係から、ベンヴォーリオは男優ではなく女優のカトゥラ・モリシュが演じる。
彼女はロミオの召使いバルサザー役も演じるが、衣裳もそのままなので、バルサザーとしてかベンヴォーリオとしてか判然としないが、この演出ではジュリエットの死を知らせる役はベンヴォーリオとして見る方がすっきりする。
上演時間が1時間20分程度ということもあって、速いテンポで進み、そのため台詞や場面の省略が多かった。
このテンポの速さは、最初の内はスピード感があってむしろプラスに感じて見ていたのだが、台詞に余情感が乏しく、全体を通して観終わった感想はダイジェスト版のような感じがした。
特に最後のロミオとジュリエットの死の場面は、付け足し的な演技で感動的な場面としての見せ場もなく、何か拍子抜けした終わり方であった。
全体として、省略された箇所はこの物語の展開をよく知っているだけに、その間のつなぎの台詞や場面を、自分の頭の中で補いながら見ている自分がいた。
台詞の中では、乳母がジュリエットの年齢をいう時、16歳という言葉を繰り返していたのが耳についた。
16歳と言えば高校生の年で、今風の感覚では13歳の少女よりリアルさが感じられるので、この年齢の変更は現代の若者という設定で意識的に変えたのであろうか。
現代の場面に置き換えているということもあって、修道士ロレンスがロミオと連絡を取ろうとするときスマホを使うが、この小道具の使い方は中途半端で一貫性に欠けていた。
このロレンスを演じたウィリアム・アシュフォードは音楽専攻でカレッジの聖歌隊のメンバーでもあるといことで、ロミオとジュリエットを結び合わせる場面ではその自慢の歌唱力披露で観客の耳を楽しませてくれた。
演技の「らしさ」としては、乳母役とこの修道士の役に物足りなさがあったが、マーキューシオを演じたジャスティン・ブランチャードとベンヴォーリオのカトゥラの演技には好感を覚えた。
出足の部分で期待しながら見ていただけに、その反動で自分としては個々の点で辛い評価になってしまったが、演出の着眼点もいいと思うし、舞台全体としても楽しんで観させてもらったので、プラス評価である。

(演出/ジョージ・カン、9月25日(日)13時半開演、成蹊大学4号館ホールにて観劇)

 

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