高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   Kawai Project Vol.2 『まちがいの喜劇』       No. 2016-037
 

この舞台の感想をどのように表現すればよいのか、言葉に悩んでなかなか書き始めることが出来なかった。
そこで思いついたのが、この舞台は優等生が集まってできた舞台だということだった。
翻訳の河合祥一郎に始まって、出演者の顔ぶれも、いずれもが優等生的である。
優等生集団はえてして面白みに欠けるが、自分がこの舞台に抱いた感想はまさにそこにあった。
それはさておき、舞台の展開を見てみよう。
舞台中央に椅子が置かれており、開演の合図も無いままにヴィオラ・ダ・ガンバの演奏者中山真一がそこでヴィオラを弾き始め、そのうちに客席から三々五々、日常的な市民の服装をした4、5名の人物たちがゆっくりと舞台に上がってきて彼の周りでその演奏に聞き入る。
演奏が終わったところで市民たちの拍手に送られ、演奏者は舞台下手にある演奏席に腰を落ち着ける。
そこに手首を縛られたシラクサ商人イジーオンが役人に引き立てられ、エフェソスの公爵らとともに登場してくる。
ヴィオラの演奏を聴いていた市民たちは、そのまま見物者となってその様子を見つめている。
舞台背景となるパネル状の装置を、登場する役者達が自在に動かし、律動感とスピード感を持たせて舞台が展開していく。
登場人物については、アンティフォラス兄弟を高橋洋介が一人二役を演じるが、二人が同時に登場する最後の場面では、別の役者が片方のアンティフォラスを演じたが、このような演出は他にも『十二夜』などで双子が同時に登場する場面でとられることがあって、特に珍しいことでもない。
一方の双子の兄弟ドローミオは、おかっぱの髪型で姿形を似せ、衣裳も同じもので色違いにしているだけで、ちょっと見ただけでは見分けがつかないくらいよく似ており、この二人を演じたのは、新国立劇場演劇研修科出身の寺内淳志(7期生)と梶原航(5期生)。
ドローミオ役以外にも新国立劇場演劇研修科出身が多く出演しており、エフェソスの公爵は4期生のチョウ・ヨンホ、ルシアーナ役の沖田愛(6期生)、そのほかにも商売女、商人1、2、女中リュース、牢番、修道女・召使い役など、いずれも新国立劇場出身で、いずれもしっかりと訓練を受けてきた演劇界での優等生と言えるメンバーである。
シラクサの商人イジーオンと商人バルサザーは文学座の原康義、イジーオンの妻で修道院長エミリアは俳優座代表の岩崎加根子で、これまた演劇界では超ベテランの存在である。
金細工師のアンジェロを演じた小田豊、ドクター・ピンチを演じる新宿梁山泊の島本和人なども異色俳優で、演技人としては申し分ないキャスティングであるが、全体の中ではなぜか面白みに欠けて感じたのは自分だけであろうか。これは好みの問題もあるので、何とも言いようがない。
台詞については、河合祥一郎の新訳に一貫した姿勢で、原作のリズム、韻を重んじた翻訳となっているが、今回の舞台で面白みに欠けて感じたのは(個人の感覚の差と言えばそれまでであるが)、このライムを意識し過ぎた台詞回しにあるような気がする。
はじけるような面白さを期待していた自分にとっては、不消化に終わった舞台であった。
上演時間は、途中休憩なく、2時間。

(翻訳・演出/河合祥一郎、9月7日(水)19時開演、池袋・あうるすぽっと、
チケット:4000円、パンフレット:500円、座席:E列10番)

 

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