高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   あすぷ新沼ゼミ公演 『くたばれ!ロミオとジュリエット』       No. 2016-035
 

明治大学では毎年公演を続けている明治大学シェイクスピア・プロジェクト(MSP)、それにMSPのOBと現役からなるMSPインディーズ・シェイクスピア・キャラバン隊のほかに、学内の演劇集団がいくつかあり、今回初めて、その演劇活動を知る機会を得た。
今回の“あすぷ新沼ゼミ”公演では、3つの学内演劇集団―実験劇場、劇団星乃企画、劇団活劇工房―と明治大学演劇研究部のメンバーが参加協力している。
シェイクスピア劇の主人公以外の登場人物を主人公にした劇では、『ハムレット』のローゼンクランツとギルデンスターンを主人公にしたトム・ストッパードの『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』が有名であるが、『くたばれ!ロミオとジュリエット』では、名前だけ登場し舞台には一切登場しないロザラインを主人公に仕立てて脚本を作り上げている点に興味を感じた。
ロザラインはティボルトの妹でジュリエットの従姉として設定され、原作通りロミオの初恋の女性で、彼から毎日ラブレターを受け取りながらも返事は一切出さないが、手紙を貰うことにはまんざらでもない様子である。
ティボルトもここでは妹思いの優しい兄として妹の事を常に気遣っている。
事態が一変するのは、ジュリエットのための舞踏会の場で、ロミオがジュリエットに一目惚れし、その様子をロザラインは目撃してしまったことから始まる。
それまでロミオの求愛を無視続けてきたにもかかわらず、ロザラインは嫉妬に駆られ、二人の恋の妨害を企てる。
彼女の女中アマリアと、ロミオが信頼するロレンス神父までも色仕掛けで篭絡し、自分の企てに引き入れる。
そんな最中に、マキューシオを殺したティボルトをロミオが殺したことで、ロザラインは嫉妬心に加えて兄を殺された復讐心で、追放されたロミオに届けるはずのロレンス神父の手紙を妨害し、そのためロミオは仮死状態のジュリエットを死んだものと思い、毒を飲んで自殺し、目を覚ましたジュリエットも後を追って自害する。
登場人物は、ロザライン、ロミオ、ジュリエット、ロレンス神父、アマリア(女中)、ティボルト(パリスと二役)、マキューシオ(序詞役と二役)の9人を7名で演じる。
劇の組み立てとして、プロローグに序詞役が登場し、この悲劇の梗概と物語の主人公がロミオとジュリエットではなくロザラインであることを語るが、ヒロインのロザラインが序詞役としてエピローグをプロローグと同じ内容を語るが、最後にこの劇の主人公はプロローグの口上とは異なり、ロミオとジュリエットであることを語って暗転となる。
主演のロザライン役の矢野愛子さんだけが演劇集団には属していないようで、他の6人は3つの演劇集団のいずれかに所属している。
演技面、というより全体の印象からであるが、ジュリエットを演じた小柄な船戸茉由子さんは、14歳(になる少し前だが)のジュリエットの初々しさと清純さを感じさせるとともに、その表情の愛くるしさに新鮮な好感を感じた。
台詞面では、言葉遣いや表現に若さを感じさせ、今どき風のギャグや、上演する地の利をまじえた台詞では、バルコニーシーンにあたる場面で、ロミオがジュリエットに一生懸命愛を訴えている最中に電車の通る音響を入れ、ロミオが口をぱくつかせるだけで何も聞こえず、「今のは何の音ですか?」という問いに、ジュリエットが「京王線の電車の音」と答えると観客が一斉に笑うという遊び心もあって結構楽しむことが出来た。
上演の会場は学内の教室で、観客席は階段状に椅子がセットされているので後部席でも十分に見ることができ、50席前後の座席はほぼ満席の状態で、観客のほとんどは学内の学生だと思われた。
学生たちが利用できるこれだけの設備を学内に備えていて、恵まれた環境だと感銘した。
上演時間は、約90分。

(脚本・演出/辻原 薫、9月4日(日)13時開演、明治大学和泉キャンパス
第1校舎005教室にて観劇)

 

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