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  Shakespeare Play House 第2回公演 『夏の夜の夢』       No. 2016-032

 小田急線の玉川学園前を下車して、徒歩7、8分の玉川学園前1丁目の交差点の信号のところに、英国の紅茶を出すShakespeare Tea Houseがある。そのShakespeare Tea Houseを会場にして今年4月にShakespeare Play Houseが旗揚げ&こけら落とし公演として朗読芝居『ハルとフォル』(『ヘンリー四世』より)を上演したのに続いてシェイクスピア没後400年記念公演第2弾として、『夏の夜の夢』を上演した。
 この喫茶店の作りは少し変わっていて、平土間のスペースとその平土間とほぼ同程度の広さの高さ40cmほどの床面があり、それがそのまま舞台ステージとして使用できるようにもなっている。
 自分が観た千秋楽の公演では定員12名のところを20名ほどの観客がいて、客席は平土間と舞台ステージ上に設けられていて、舞台上と平土間の両方の狭いスペースが出演者の演じる舞台空間となっていた。
 狭い空間に出演者と観客で空調も十分には効かず、開演前に観客全員に瞬間冷却材のパックが配られた。
 記念すべき第2回公演の出演者は、ハーミア役のダブルキャストを含めて総勢9名で、シーシュース/オーベロン役の中島大地とヒポリタ/タイテーニア役の平井友梨以外の出演者は、全員ひとり数役をこなす。
 たとえば、ヘレナとスナウト(劇中劇でシスビーを演じる)の宇多賢太、イージアスとボトムを演じる青田恵兎、ライサンダーとピーター・クインスを演じる梅澤貴理子など。
 出演者は猫の仮面を頭につけ、お尻には長い尻尾をつけて登場し、この劇が夜行性の猫の夏至の日の夢としての設定であることをプロローグとして劇が進行し、会話の中にも猫的な発音がときおり織り込まれている。
 それ以外については、テキストとして用いている小田島雄志の翻訳に忠実な内容で展開していく。
 劇もすべて終わったところで、演出者であるホースボーン由美が、劇の中で一番重要なところを抜かしてしまったということで、リベンジとしてダブルキャストであるハーミアを入れ替えてその部分をもう一度やらせて欲しいという異例の申し入れがあった。
 場面は、惚れ薬のせいでライサンダーとデミートリアスの二人が競争してヘレナに求愛しているところで、そこに現れたハーミアがヘレナと喧嘩騒動を引き起こすところである。
 ダブルキャストの体形の特徴で台詞の内容を変えており、本番でハーミアを演じた橘彩佳のときには、彼女がヘレナに対してボクシングのスタイルを見せるところからボクサーと呼ばれるが、リベンジでハーミアを演じた新原麻衣は体形がずんぐりしている所から、相撲取りが四股を踏むような恰好をするのでドスコイと呼ばれる。
 本番全部の演技より、このリベンジの部分の演技の方が俄然面白く愉快であった。
 演出者は台詞のミスと断っていたが、むしろこの両方法を見せるために故意に仕組まれたものではないかと思いたくなる内容であった。
 出演者全体にほぼ言えることであるが、台詞回しが冗漫でやたらに声を張り上げるところなどは聞き苦しいものがあったが、パックを演じる長野耕士は大半の台詞がラップ調で調子が良かった。
 観客も出演者の友人が大半のようで若い人がほとんどで、その意味では和気あいあいとしたものがあり、熱気を感じさせるものがあった。
 上演時間は、本編で休憩10分をはさんでほぼ3時間、延長分を入れると約3時間20分であった。
 Shakespeare Play Houseでは、一緒に面白いシェイクスピア劇を作ってみたいという仲間を募っており、その一環としてシェイクスピア同好会と称する朗読会を企画している。
 シェイクスピア劇愛好者として、このような地道な活動に敬意を表したい。

 

訳/小田島雄志、演出/ホースボーン由美
8月7日(日)13時開演、玉川学園前Shakespeare Tea House

 

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