高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   "サロン de お芝居"による第1回公演 『ハレクイネイド』       No. 2016-031
 

〜 道化芝居 『ロミオとジュリエットの悲劇』の喜劇 〜

昨年4月に亡くなられた荒井良雄先生が今回の舞台の座長である高橋正彦と「いつか一緒にやりたいね」と言っておられた『ハレクイネイド』を上演することが出来た喜びを、高橋が終演後の挨拶で声を詰まらせながら、観客にお礼の言葉を述べていたのが感慨深かった。
『ハレクイネイド』は広川治訳で2年半ほど前の2013年12月に、テアトルエコーの舞台で観劇しており、その内容については観劇日記に詳しく記しているのでここでは割愛する。
普段は講演会やフランダンスの練習場所として使われている阿佐ヶ谷ワークショップの小さな空間を使っての公演で、会場に入ってまず感心したのが、この小さな空間に見事な舞台を作り上げていたことであった。
えんじ色の幕で覆われた舞台空間の中央奥には、ミカン箱ほどの大きさの箱を三段積み重ねて煉瓦塀を模してバルコニーにし立て、その下手側に置かれた観覧植物の鉢が、塀に蔦を這わせているイメージを想起させていた。
衣裳にも注目するものがあり、中でも感心したのは、座長の妻エドナ・セルピー(森秋子)が演じるジュリエットのための衣装が、この公演で座長の娘ミュリエルを演じる倉橋秀美が、かつて『じゃじゃ馬馴らし』のビアンカを演じた時に自らが作った手作りの衣装だということだった。
出演者のアンサンブルにも注目すべきものがあった。
シェイクスピア・シアター第1期生として活躍した高橋正彦(座長アーサー・ゴスポート)はじめ、文学座養成所6期卒業の森秋子、劇団近代座でシェイクスピア劇を数多く演じた久野壱弘(ミュリエルの夫役)、新地球座代表の倉橋秀美などの実績あるベテラン勢から、現在小劇場などで活躍中の川口未央(舞台監督ジャックの婚約者ジョイス)、石井麻衣子(プロローグ役)、そして今回が初舞台という河村まこ(舞台監督助手ジィニー)と尾崎廣子(アーサーの秘書ミス・フィッシュロック)など多彩な顔ぶれである。
河村まこは、シェイクスピアが大好きで、シェイクスピア・シアターの中高年クラスの開始から現在まで8年間続けているというから、初舞台というのが信じられない自然体の演技であった。
「日英朗読講座」で朗読を学んだ尾崎廣子は舞台経験がなく芝居は今回が初めてだが、それが信じられないほどで、今後芝居出演にはまりそうに思われた。
舞台監督ジャックを演じた臺史子は明治座アカデミーで役者の勉強をし、舞台出演の経験もあるが、今回の出演は4年ぶりということだったが、素直な演技スタイルに好感を覚えた。
劇場支配人と警察官を演じた滝本忠は、明治座アカデミー4期生で、シェイクスピア・シアター中高年クラスでシェイクスピアを学びながらその舞台にも立っている。
ゴスポートの伯母・老女優役の山崎恵も滝本と同じく明治座アカデミー4期生で、現役で活躍中。
楽師ウォーターズと照明技師ウィルを演じた清水英之は、得意のシェイクスピア・ソングを活かしての出演。
楽師チャドリーを演じた宮崎精一は演劇集団「たつのおとしご会」所属。
それぞれの出演者がその紹介にある通り、持ち味が出ていて観ていて親しみを感じる楽しいものであった。
演出としては終わりが印象的で、リハーサル中のごたごた騒動もなんとか無事に収まったところで、もう開演時間だと言う知らせでいったん幕が引かれ、幕の外に『ロミオとジュリエット』の序詞役である石井麻衣子が登場し、そのプロローグを朗読し、この本舞台の幕が開き、一同勢ぞろいしてこの劇の幕となる。感動的な場面であった。
台本は、荒井良雄訳に広川治の新訳を加え、その上で高橋正彦が劇中劇『ロミオとジュリエット』の台詞に坪内逍遥訳を用いていたのが、老優がロミ・ジュリを演じるというのにふさわしい設定で非常によかった。
出演者全員に、拍手!!!


(原作/テレンス・ラティガン、台本/高橋正彦、7月23日(土)14時開演、
阿佐ヶ谷ワークショップにて。チケット:2000円)

 

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