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  シェイクスピア一人芝居・英語劇 『マクベス ―ヘカテの毒』 
       Solo-Shakespeare, Macbeth : Hecate's Poison    
No. 2016-029

 出演者の佐藤さんによると、2014年のエディンバラ演劇祭で好評を博したという『マクベス』の一人芝居をそのままで再演したという。
 公演は早稲田大学・人間情報学科・保崎研究室後援・主催によるもので、急遽決まったということで、観客は自分を除くと保崎研究室の関係者(生徒)ばかりのようで、10名足らずであった。
 全体的な感想としては、まずその美しい英語の発声を堪能させてもらったことと、魔女、ヘカテを骨格にして物語を進展させていく構成の面白さを楽しむことが出来た。
 舞台の下手前方に、黒い布で覆われた台の上にチェスの駒が並べられており、魔女がチェスの駒を動かすことでマクベスやマクベス夫人の運命を操っていく。
 チェスの駒を動かす際に魔女が状況説明を加えるので、物語の進行がよく呑み込める。
 魔女の台詞、
 A sailor's wife had chestnuts in her lap,
 And munched and munched and munched. 'Give me,' quoth I.
 … Her husband's to Aleppo gone, master o'the Tiger. 
から始まって舞台に呪文がかけられ、マクベスの死によってその呪文が解かれ、舞台が終わるという趣向。
 キーワードは「タイガー号」のようで、マクベスを表象してこの言葉は劇中幾度か繰り返される。
 10人前後の登場人物の声色を変えて演じ、マクベスとマクベス夫人の二人の会話は、片側が深紅でもう一方の片側が深い緑色の二色に分けたマントを羽織って、マクベスの台詞では観客の側に緑色を、マクベス夫人の時は深紅の色の側を向けて語ることで人物の雰囲気を感じさせる。
 門番登場の場面では手袋状の指人形を操って、門を叩く音は足を踏み鳴らすよう観客に参加を求める。
 繊細で神経過敏的な感じのマクベス夫人の声は、マクベスとの対比としてそのように感じた。
 マクベスの有名な台詞'Tomorrow speech'は静かに沈んだ抑制された台詞回しで、却ってその台詞に引き込まれていくものがあり、自分の描いていたイメージとは異なる台詞回しではあったが味わい深いものがあった。
 全体で60分という凝縮された上演時間であったが、『マクベス』のすべてのハイライトを存分に味わうことが出来た。

 

脚本・演出・出演/T. Sato
7月16日(土)15時開演、早稲田小劇場・ドラマ館、入場料:2000円

 

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