高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   ナショナルシアター・ライブ 『オセロ』      No. 2016-026
 

シェイクスピアイヤーを記念しての舞台映画連続上映のしめくくりは、ニコラス・ハイトナー演出、ローリー・キニア(イアーゴー)とエイドリアン・レスター(オセロ)が演じる『オセロ』、これで今回の上演作品5作をすべて観ることが出来た。
舞台を映像版で観るのはあまり好まないのだが、今回のシリーズはさすがにありがたいと思った。
映像版の利点は、細かいところがアップによってよく見えるだけでなく、インターミッションに演出者と主演者のインタビューが組み込まれていて、演出の背景などがよく理解できたことであった。
特に今回は舞台装置を上から俯瞰する形で映し出していたので全体の様子がよく分かり、スケールの大きさを感じた。
今回のシリーズで共通していたのは、すべて現代的な衣装で、時代設定も現代とほとんど同じであった。
ハイトナーは演出に当たって、実際に海外派兵の経験のある将校の経験を参考にしており、しかもオセロと置かれた状況とまったく同じで、任務地に着いた時には戦争は終結しており、事後管理が実際の任務となったということである。
戦いのない兵士たちは時間を持て余してしまうので、彼らの規律をいかに守らせていくかということが重要なこととなっていくが、トルコ軍が嵐で自滅し、戦うことなく勝利を得たオセロもまさにその立場に置かれることになった。
このインタビューの解説は、これまで考えたこともない観点からの発想で非常に参考になった。
ローリー・キニアが演じるイアーゴーだけが、ベレー帽の被り方からズボンの裾の上げ方についてだらしない恰好をしていたと、この舞台を見た現役の軍人が感想を語っていたというが、その恰好こそイアーゴーが酒と女にだらしないことを表していた、というのが将校の話であった。
イアーゴーがオセロを憎む理由が、この舞台では鮮明にイアーゴーの台詞を通して語られる。
イアーゴーは、オセロが年功序列を無視して実戦の経験のないキャッシオを副官に選んだことを恨みに思っており、そのことが何度も強調される。
デズデモーナ―が最初に登場してきた時の衣装が、ジーンズでカジュアルな格好をしていたことと、ハイトナーの考えでイアーゴーの妻エミリアに軍服姿をさせていたのも、これまでにない新鮮さを感じた。
舞台全体を通して印象が特に強かったのは、ローリーが演じるイアーゴーの独白の台詞であった。
ニコラス・ハイトナーとローリー・キニアは、ロンドンで『ハムレット』の舞台を観たことがあるので、期待していたがその期待通り、楽しむことが出来た。
上演時間は、3時間20分。

(演出/ニコラス・ハイトナー、6月18日(土)、シネリーブル池袋にて。料金:3000円)

 

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