高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   タイプス・プロデュース公演 『マクベス』      No. 2016-024
 

タイプス公演の『マクベス』はこれまでにも何度か観てきているが、その方向性がますますエンターテインメントに向かっていて、一つの新しいジャンルを形成していっているように感じた。
ダンスやエアリエルシルクを取り入れているのはこれまで通りだが、その比重が大きくかつ重要な役割をこれまで以上に持たせているようであった。
コンテンポラリーダンスとクラシックバレーを融合させ、からくり人形のような動きのパントマイムの所作を演じるダンサーを加えることで、舞台の山場で場面を大きく盛り上げていた。
この演出の方向性そのものには共感もし、今後もそれに期待しているが、反面、台詞劇としての演出に多少の疑問を感じる面があった。
特に疑問を感じたのは、登場人物の扱いについてであった。
まず、米山実生が演じたレノックス役であるが、貴族の一人としての役であったり、時にはマクベスの召使いのような立場になったり、門番登場の場面では門を開ける役をしたり、バンクオー暗殺の場で暗殺者の応援に加わったりして、それらの役をそのままの姿で演じるので、同一人物として演じているのか、それともその場における別の人物として演出されているのか判然としなかった。
これらをすべてレノックス同一人物として演出しているのであれば、演技上疑問視せざるを得ない。
これは二人の暗殺者についても言えることで、バンクオー暗殺後マクベスに報告し、そのままの姿で宴会の客人として加わり、最後にはそのままの姿格好でマルカム側の兵士を演じているので違和感があった。
この暗殺者については、マクベスに見切りをつけての裏切り行為としてマルカムについたという考え方もあるが、それだけの意味を持たせているようには思えなかった。
マクベス夫人の侍女が、イングランド軍が攻めてきたことをマクベスに報告する役を担うのも、通常は侍女などがする役ではないので、もう少し工夫が必要ではなかったかと思う。
演出面で新鮮に感じたのは、ダンカン王がマクベスの城を訪れる際、同行する一行の中に、マクダフが夫人を伴っていたことで、そのマクダフ夫人役は、以前、タイプス公演の『マクベス』でマクベス夫人を演じており、今回は特別出演の形であったが、舞台に花を添えたような華やかな明るさを感じさせたのが印象的であった。
マクベスの新本一真、マクダフの庄田侑右、ダンカン王の加藤雅也、バンクオーの藤村忠生らはベテランらしい台詞力を感じさせた一方、やなぎまいが演じるマクベス夫人は、退場する場面で夫マクベスとは左右に別れるなど、全体的に冷ややかな感じのするマクベス夫人であった。
魔女役には若い女優が顔面を白化粧して演じていたが、台詞的にも若さが目立って、いっそのこと老婆としてではなく、若い魔女として演じさせた方が自然でよかったのではないかと感じた。
Anz・あんずのエアリエルシルクは、今ではタイプス公演のシェイクスピア劇になじみのものとなっており、その空中演技を見るのも自分にとって楽しみの一つとなっている。
台詞劇としては多少の不満もあったが、エンターテインメントとしてはこれからも期待すべきものを感じる舞台で、大いに楽しむことが出来た。

(構成・演出/パク・バンイル、6月16日(木)14時開演、座・高円寺2、全席自由席)

 

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