高木登 観劇日記2016年 トップページへ
 
   オペラシアターこんにゃく座 『オペラ クラブマクベス』      No. 2016-003
 

2016年、こんにゃく座創立45周年を迎える第一弾として2007年9月に初演された『オペラ クラブマクベス』が8年半ぶりに、昨年6月に亡くなったこの作品の台本・演出者であった高瀬久男の追悼公演として再演。
この間には、2012年1月に芸術監督・作曲の林光が他界し、今年1月11日には前回ダンカン王を演じ今回も出演予定であった座員の川鍋節雄が永眠している。
初演の出演者と見比べてみると主だった役の大半が同じ役で再演に臨んでいるが、初演でマクベス夫人と「男」の妻を演じた相原智枝が山本伸子に、ダンカンが川鍋節雄から武田茂が変わって演じた。
その他、演出が高瀬久男から俳優座所属の眞鍋卓嗣に、美術が松井るみから伊藤雅子に変わっている。
初演のシアタートラムの客席は、前列の2列が二人掛けの丸テーブルが4つ並びクラブのサロン風な雰囲気で、舞台中央には、CLUB MACBETHと書かれた戸口があり、漆黒のエナメルのような光沢のあるホリゾントが鏡面のようになっていて観客席を映し出していた。
それに対して今回の舞台は少し地味な感じで、CLUB MACBETHの看板も見えない。といっても自分の席は左側のバルコニー席のため左端の部分が見えないので、まったくなかったのかどうか、はっきりとは言えない。
3人の魔女の登場の仕方も前回とは少し異なっていた。
初演ではパーカッションの音で雷鳴、照明で稲妻を表し、魔女たちは地面を這うようにして登場している。
今回は、パーカッション、フルート、ピアノの音のみで雷鳴、稲妻を表現し、魔女は張り出し舞台の奥に張られた臙脂色に近い赤い幕上にシルエットで映し出され、その後で幕の内側から出てくる。
クラブ・マクベスの客引き、あるいは給仕人(初演と同じく井村タカオ)が「男」(初演と同じく大石哲史)をクラブに誘い込む。
客は彼一人だけだが、クラブ・マクベスで『マクベス』劇が繰り広げられ、「男」が途中からマクベスその人となって演じ始める。劇中劇のマクベスは初演と同じく佐藤敏之が演じている。
前回書き残していない感想で今回特に印象に残ったのは、マクダフ(初演と同じく富山直人)がイングランドに逃亡しているマルカム(初演と同じく島田大翼)を訪ねて、マクベスへの蜂起を促す場面で、マルカムが自分を偽って語るところで「男」がマルカムを嘘つきだと言ってののしり、嫌いだとも言う。
その本音の場面が新鮮な感じで、『マクベス』の中でこのマルカムという人物に対して持っていたわだかまりのような気持が氷解するような小気味よい感じであった。
マクベス(「男」)が劇中で殺され、暗転した所で「男」は客席の丸テーブルにうつ伏したまま起き上がらない。
給仕人が確かめると、彼は死んでいる。
そこへ劇中ヘカティを演じた女(岡原真弓)が、「男」の妻(劇中でのマクベス夫人)がガス自殺をして死んだことを伝える。このクラブでは、このようないわくありげな客を呼び込んでは『マクベス』を見せているらしく、結末はいつも同じようにその客が死んでいることをうかがわせる。
シェイクスピアの『マクベス』をオペラの歌唱で楽しむ一方で、複層構造となったドラマの展開の面白さも楽しむことが出来る。
上演時間は、途中15分の休憩をはさんで2時間30分。

(台本/高瀬久男、作曲/林 光、演出/眞鍋卓嗣、2月8日(月)13時開演、
吉祥寺シアターにて観劇、 チケット:(トクマルシート)4000円、座席:BL列6番)

 

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