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2016年の「シェイクスピア劇回顧」と「私が選んだベスト5」

●2016年のシェイクスピア劇回顧

 2016年はシェイクスピア没後400年ということで、関連の行事や上演の数も多かったように思われる。自分の観劇日記が60件を超えたのも初めてのことで、内容的にも通常のシェイクスピア劇および関連劇のほか、バックステージもの、朗読劇、バレエ、パントマイム、シェイクスピアと音楽、映像によるシアターライブ等々、バラエティに富んだものとなった。シェイクスピアをいろいろな形で楽しむことができただけでなく、HPの観劇日記を通して新たな出会いもあり、数だけでなく内容的にも収穫の多い年であった。
 例年自分の独断で選ぶベスト5も、どれを選ぶか大いに迷うほどであったが、特筆すべきものは「特別賞」とした。また、新たな出会いの活動には期待をこめて「新人賞」として選びだした。そして、シェイクスピア関連劇や、映画、シアターライブなどの映像版も別枠で選考して記憶にとどめるべく記録した。それぞれの選考内容は次の通りである(寸評を付す)。

●2016年の私が選んだベスト5
1. SPAC公演、『ロミオとジュリエット』(2月)
開幕からそくぞくするような期待感に沸く劇を久々に観る思いであった。
2. 『カクシンハン版リチャード三世』(5月)
『ヘンリー六世』三部作一挙公演との同時公演。若い出演者を含め、今一番勢いを感じさせる劇団であるということだけでなく、フレッシュな感覚の演出で、また一つ新たなシェイクスピアを楽しませてくれ、期待通り以上楽しむことができた。
3. 明治大学シェイクスピアプロジェクト公演、『夏の夜の夢』&『二人の貴公子』(11月)
この二作の共通点は、登場人物のシーシアスとヒポリタの二人以外には特にないだけに、二つの作品をどのように結び付けて演出するかという点に興味の焦点が絞られてくるが、その結びつけの見事さに感嘆した。
4. 新国立劇場公演、『ヘンリー四世』二部作(第一部「混沌」、第二部「戴冠」)一挙上演(12月)
余分な解釈・批評は自分には不要で、エンターテインメントとして楽しんで観ることができた。
5. 東京シェイクスピア・カンパニー公演、『メジャメジャ』(Measure for Measure)(12月)
多種多彩な出演者の演技を大いに楽しんで観ることができた。
   
●特別賞
1. 板橋演劇センター公演、『ヘンリー八世』(4月)
1980年の『夏の夜の夢』旗揚げ公演から足かけ37年がかりで、シェイクスピア劇37作、全作公演を達成した主宰者円道一弥氏の、全作品演出・出演はギネスブックもの。
2. シェイクスピア・カンパニー公演、『新ベニスの商人』(2月)
時代背景を江戸時代に移し、登場人物も実在する我々にも親しみのある人物で、登場人物のネーミングと構想の面白さで楽しませてくれただけでなく、観劇後にほのぼのとした温もりを感じさせ、充足感に満たされた劇であった。
3. MSP(明治大学シェイクスピアプロジェクト)キャラバン隊の一連の公演活動
「島村抱月脚色台本に基づく『クレオパトラ』」(8月)
『唐十郎 X シェイクスピア』朗読劇(10月)
『シェイクスピアと音楽』(10月)
本体のMSPから発展して「キャラバン隊」つぉいての旺盛な活動を大いに楽しませてもらった。その質の高さも特筆すべきものがある。

●私にとっての「新人賞」

1. ホースボーン・由美のShakespeare Play Houseの朗読活動
『夏の夜の夢』(8月)、『マクベスの個人的な悲劇』(12月)
2. 円弥会・朗読劇、『マクベス』(10月)
シェイクスピア劇に初めて挑戦。地域(相模原)の活動として今後を期待。
   

●シェイクスピア関連劇、シアターライブ、映画など

1. T加藤健一事務所公演、『ハリウッドでシェイクスピア』(9月)
遊び心満載で、楽しく、面白い、そのことだけでも十分で、実在の映画をバックステージに、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を二重に楽しむことができた。
2. ニコラス・ライト作の『クレシダ』(9月)
はからずも、平幹二朗の最後の舞台となった。シャンクを演じた平幹二朗はほとんど舞台に出ずっぱりであるが、その演技力、台詞力を堪能させてくれ、少年俳優の成れの果てである衣装係ジョンを演じた花王おさむは、軽やかな存在感を楽しませてくれた。
3. 「ジャスティン・カーゼル監督の映画、『マクベス』(5月)
魔女、マクベス、マクベス夫人などの登場人物の描き方、および戦場とスコットランドの風景など、映像ならでは可能な場面も多々あり、いろいろな面において刺激的な映画であった。
4. ナショナルシアター・ライブ、サム・メンデス演出、サイモン・ラッセル・ビール主演の『リア王』(6月)
演出そのものもすごいと思ったが、それに劣らずリアを演じたサイモン・ラッセル・ビールの演技にも目を見張らせるものがあった。サイモンはリアを演じるにあたって精神科医から「レピー小体型認知症」についての助言を得て役作りをしたという。
5. 新国立劇場バレエ公演、『ロミオとジュリエット』(10月)   
マクミラン振り付けのバレエ『ロミオとジュリエット』については、一度は見てみたいと思っていたが、思っていた以上に素晴らしいものであった。

 

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