高木登 観劇日記2015年 トップページへ
 
   タイプス・プロデュース公演 No.66 上杉豪の『ハムレット』       No. 2015-05
 

クローディアスと亡霊を演じる新本一真、ポローニアスと墓掘りを演じる和久井淳一を除けば、出演者のほぼ全員が舞台経験の浅い20代という若さ、それだけに舞台経験の豊富な新本一真との台詞力の差が歴然と現われてしまった舞台であったが、熱意には伝わってくるものがあった。
今回のこの『ハムレット』は、これまでにもタイプスの公演で『間違いの喜劇』のドローミオ役などで楽しませてくれた上杉豪が自ら志願してのもので、それだけに彼のハムレットを楽しみにし、期待もしていた。
全体的な演技、台詞の未熟さは別にして、演出に注目する点があった。
その一つは、いわゆる「尼寺へ行け」の場面で、隠れて様子を伺っていたポローニアスが何か物を落とし音を立て、その物音を聞きとがめたハムレットはポローニアスを物陰から引きずり出してくるという演出である。
テクスト上の解釈としては問題であるかも知れないが、その大胆な演出は注目に値した。
また、旅役者の一座の俳優が全員女優で、ハムレットの前で演じるピラスの台詞を旅役者が一人一人輪番で語るのも一つの特徴であったが、本番の芝居を演じる場では仮面を被った異者が一人混じっていて、その人物は実はスパイで、王クローディアスの狼狽ぶりをフォーティンブラスに報告するという原作にはない演出があった。
今一つの特徴として、Anz(あんず)のエアリアル・シルク(空中パーフォーマンス)で、「尼寺へ行け」の箇所でも演じられて、ここで休憩の幕となったが、この場を含めて前後3回にわたってなされるこのパーフォーマンスの活用が、その場の舞台の印象を深める効果を感じた。
上杉豪のハムレットは演技力、台詞力が十分であるとは言えないが、演じる姿にすごく熱いものが感じられた。
それは終演後にタイプス主宰者の新本一真に聞いて初めてわかったことであるが、上杉豪はこの舞台を最後に、若くして(28歳になったばかりである)家業の社長職を継ぐために俳優をやめるということであった。
それゆえに熱い気持があって、その気持が伝わってきたのだと思う。
彼の今後の活躍を期待しその成長を楽しみにしていただけに残念でならないが、いつかまた帰ってくる日のあることを望んでやまない。

(構成・演出/パク・バンイル、1月22日(木)17時開演の部、座・高円寺2にて観劇)

 

 

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