高木登 観劇日記2015年 トップページへ
 
  しんゆりシアター公演 『恋の骨折り損』      No. 2015-37
空白

本舞台の上に、開帳場式に客席に向かって傾斜している大きな円形の舞台があり、中心がドーナツ状にくり抜かれており、ピンクとブルーの格子状の模様が大きく描かれていて、ルーレット盤のような明るい色調である。
高い天井からは額縁をなすようにして大きなリボンのように白い布が両脇に垂れ下がっていて、両側の最上部には2対ずつ天使の姿をした白いキューピッドが舞台に矢を向けた姿で飾られている。
座席のB列10番は、最前列でど真ん中の席で、舞台との距離は1mばかり。
出演者が舞台の先に立つと見上げる形で少し窮屈な感じがするが、台詞を吐くときに飛ぶ唾のしぶきまでがよく見える。
ナヴァール国の国王をはじめ若い貴族たちの服装がカジュアルな明るい色調で、それだけでもはじける若さを感じ、実際に若い俳優たちの台詞も若々しく、台詞力もしっかりしていて聞いていて気持ちがよい。
フランス側の王女とその侍女たちも色とりどりの服装で、カラフルなパラソルをさして登場してくると、また一段と舞台が明るく感じた。
『恋の骨折り損』の舞台はこれまで数えるほどしか観る機会がなかったが、その数少ない中で最も楽しむことが出来た舞台と言える。
何よりも台詞劇としての台詞の応酬を楽しむことが出来た。
本筋のナヴァール国の貴族たちとフランス側の女性たちの台詞はもちろんの事であるが、脇筋のスペイン人アーマードとその小姓モス、田舎者のコスタードと田舎娘のジャケネッタが演じるドタバタ劇が楽しく、面白かった。
特に、学校教師ホロファニーズの発案による英雄劇は、『夏の夜の夢』でアテネの職人たちが演じる劇中劇と同じような楽しさがあっただけでなく、最後にカッコウとフクロウの唄を彼ら全員が歌う場面は、最後の締めくくりとしても非常に良かった。
フランス王の突然の死でフランス王女たちは急遽帰国することになるが、この最後の場面をいろいろ脚色して、少し悲劇的色調を帯びる演出などもこれまでにはあったが、この演出では素直な感じで、明るい未来を感じさせる雰囲気があった。
最後がこのように歌で締めくくられるが、この劇は全体を通しても音楽劇をなしていて、終始、アコーディオンの演奏が入り、途中の台詞が歌となって歌われるのも、この劇を楽しいものにしていた一因であったと思う。
フランスの女性たちがナヴァール国の若者たちの愛を受け入れながらも1年間の精進を義務付ける別れは、この劇の始まりである3年間の禁欲生活の誓約の根拠へと戻って行く構成で、こうしてはてしなく繰り返される終わりのない劇を感じさせる。
出演者のプロフィールを見ると、文学座や新国立劇場演劇研修所卒業生が多くを占めていて、その台詞力の確かさも頷けた。
ナヴァール王を演じた今村洋一はミュージカルや音楽劇で、しんゆりシアターには毎年出演しているということであり、ビローンの采澤靖起、コスタードの櫻井章喜、フランス王女の前東美菜子らは文学座所属、デュメインの遠山悠介、モスの角野哲郎、ジャケネッタの保可南、ロザラインの藤井咲有里、キャサリンの渡辺樹里らが新国立劇場演劇研修所の2期、3期の卒業生、マライアの竹本瞳子は劇団民藝、アーマードの坂本岳大は劇団昴出身、ホロファニーズの江崎泰介が昴所属、一人年長者であるボイエットを演じた横堀悦夫は青年座の俳優。
アコーディオン演奏は、東大文学部仏文科卒の杉山卓。
上演時間、2時間40分(途中10分間の休憩)

(翻訳/松岡和子、演出/河田園子、美術・衣装/根来美咲、10月24日(土)14時、
川崎市アートセンター・ アルテリオ小劇場にて観劇。チケット:3800円、座席:B列10番)

 

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