高木登 観劇日記2015年 トップページへ
 
  文学座公演・江守徹の『リア王』      No. 2015-02
 

横長のアトリエ舞台は、全面白い壁面でホリゾント部左右に出入り口、上手壁面にも異形の切り込みの出入り口があり、全体的に簡素な舞台装置。 
舞台装置の白一色とは対照的に、登場人物のブリテンの衣裳はリアとフランス王を除いて全員黒一色で、道化だけは明るい色調のまだら服、後半に登場するフランス軍の衣裳はグレーで、全体的に地味な色調である。 
肉体的ハンディを背負った江守徹が、肉体の老いと精神の崩壊を残酷なまでに体現している舞台であった。 
江守徹のたどたどしさを感じさせる滑舌と鈍い動きは、演技を超越した老いのリアルさがあり、逆説的に新鮮さを感じさせた。特に、ぶらりと下がった両腕の手先の細かい震えは演技の所作なのか、実際であるのかの境目が分からなかった。 
また、嵐の場面の咆哮、コーデリアが殺された時の泣き叫びの声、そして、車椅子に乗ってそのコーデリアを抱いて登場する姿は、江守徹の「いま」であり、老いたリアの真の姿でもあった。 
金内喜久夫の演じる道化は台詞にアドリブが多く、リアに寄り添う道化ではなく独立した存在感を感じさせた。 
主役リアの江守徹が70歳、グロスター伯の坂口芳貞79歳、道化の金内喜久夫81歳、ケント伯の外山誠二60歳―文学座アトリエ公演の『リア王』は、最後のオールバニ公爵の「もっとも年老いたかたがたがもっとも苦しみに耐えられた」という台詞に表現されているように、老いた(!?)俳優が最も輝いた舞台であり、その演技を堪能させてくれた舞台であった。 
上演時間は、途中15分の休憩をはさんで2時間50分。

 

(訳/小田島雄志、演出/鵜山仁、1月12日(月)13時半開演、信濃町文学座アトリエにて観劇。 
座席A列16番:最前列中央部)

 

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