濃縮された上演時間の中で、細かいエピソードまで洩らさず入っているという点では特筆に値するだろう。
例えば、ポローニアスが息子のレアティーズの様子を探らせるために召使いのレナルドーをパリに遣わすシーンなど、この場面は結構カットされることが多いにもかかわらずしっかり入っていた。また、フォーティンブラスのポーランド遠征中の場面や、彼が最後に登場する場面も原作を忠実に再現している。
骨格としての筋の展開に小細工がないと言う点では、真正面からこの作品に取り組んでいる姿勢が感じられた。かと言って何も工夫がないわけでもなく、旅役者の一行が女性だけのダンサーたちで、インド舞踊のような衣装と振りで登場し、しばしその踊りで楽しませてくれたのはそのよい例であった。
最後の場面では、フォーティンブラスと兵士たちがハムレットの亡骸を高々と掲げて退場し、礼砲が鳴り響いた後、ホレイショー一人が残って舞台後方の中央に無言で立ち、静かに照明が落とされていくのは、衝撃的な終わり方の演出に対して裏をいく形で、逆に印象付けるものがあった。
庄田侑右のハムレットは伝統的な黒い衣装で精力的な若さを感じさせ演技もよかったと思うが、それ以上のものを感じることはなかった。
佐藤奈織美のオフィーリアの狂気の演技は愛嬌を感じたものの、物足りない面があった。
演技や台詞の点では墓掘り人を演じた石山雄大が一番印象に残った。
出演は、他にポローニアスに側見民雄、クローディアスに真京孝行、ガートルードに安藤みどり、レアティーズに樫根慶太、オズリックに武田光太郎、ホレーシオに砂押正輝など、総勢36名。
全体の印象としては、奇をてらったものでなく、教科書的で素直な舞台といて感じた。
上演時間は休憩なしで2時間15分。
訳/小田島雄志、構成・演出/石山雄大
11月13日(金)14時開演、俳優座劇場、チケット:5000円、座席:3列11番
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