所狭しと、ローマ時代を表象する彫像や、色とりどりの衣服を吊るしたハンガーや、等身大の白馬の彫像、花々をいっぱいに詰め込んだ大きな花瓶、額縁に入った絵画等々で舞台全体が埋め尽くされていて、どういうふうに片づけられて舞台での演技が行われるのだろうかと気になる。
その一方、背景は例によってマジックミラーで、観客が映し出されていて、ある意味では類型的パターンである。
舞台上方には、前半部のヴェローナの場面、その後のミラノの場面ではそれぞれの公国の旗が吊るされる。
開演とともに、観客席の後方から役者たちが賑やかに舞台に向かって進んでくる。
ミラノに旅立っていくヴァレンタインとプローティアスの二人は、観客席の通路を挟んでの会話で、その他の役者は舞台の上に所狭しと並んだいろんな物を、店の商品を物色するように触ってみたりしている。
ヴァレンタインとプローティアスの二人が別れていくと、舞台上の人物たちがそれぞれ置物を運び去っていき、場面はすっきりした形へと転換し、ジュリアの邸の庭園の場となって、彼女と侍女のルーセッタが登場してくる。
今回は、オールメールキャストで、これまでの経験から自分としてはほとんど期待していなかったが、結果的にはその通りであった。
物語全体がわかっているだけに、類型的なパターンで進んでいくと、先が見えているだけに退屈な思いがしてだれた気分で観ていた。
シルヴィアを演じる月川悠貴は、しとやかで美しい女性としては実際の女性より魅力的ではあるが、それだけに予想通り「お人形さん」でしかなく、お飾り的にしか感じられず、蜷川幸雄のワンパターン化した演出でつまらない。
女性役で生き生きとして感じたのはルーセッタを演じた岡田正、道化として面白く観ることが出来たのはスピードを演じた大石継太。
シルヴィアの婚約者を演じる河内大和は、小劇場ではその演技を堪能できるのだが、大劇場では今一つ物足りなさを感じた。
台詞力と言う点では、プローティアスの父アントーニオとミラノ公を演じる横田栄司が際立っていたが、少し嫌味を感じるぐらいの臭みが気にかかる。
今回出演予定の文学座の外山誠二が怪我のため休演ということで、その怪我が気になった。
配役表と終演の舞台上の並びからして、今回の主役はジュリアを演じた溝端淳平、準主役がプローティアスの三浦涼介、ヴァレンタインの高橋光臣(この3人は残念ながら今回初めて観るので、まったく知らない)、そしてシルヴィアの月形悠貴の4人がメインであった。
拡散的で、濃密さに欠けていたような気がするので、この舞台がもっと小さな空間で演じられていたら違った印象になったかも知れない。
今回はプログラムを資料としても買う気になれず、このシリーズの観劇で初めてプログラムを買わなかった。
上演時間、途中15分の休憩を挟んで2時間20分。
訳/松岡和子、演出/蜷川幸雄
10月20日(火)14時開演、彩の国さいたま劇場・大ホール、
チケット:(S席)9000円、座席:1階O列6番
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