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  Pカンパニー公演 『お気に召すまま』               No. 2015-033

キャスティングが面白い

 楽しく観ることができたと言えば一言ですむことだが、その楽しさも一様ではなくそれを追求しだすと楽しいとはどういうことかと面倒なことになるが、自分にとって今回の楽しさは、キャスティングの面白さからくる楽しさであったと言えば一番ふさわしいのではないかと思う。
 Pカンパニーの俳優たちは木山事務所時代から長年なじんだ役者が多いだけに、各自に対する既往のイメージが先立ち、それとの相俟ったキャスティングの面白さを感じるのであった。
 なかでもシーリアの父フレデリック公と羊飼いの女フィービーを演じる千葉綾乃が観ていて楽しく面白かった。
 力士チャールズとジェイクスを演じる内田龍麿も懐かしさを先に感じる役者であるが、平土間の狭い空間で目の前で見ると舞台で見るよりずっと大きいのに驚かされたが、彼の「世界はすべて舞台」の台詞は自然体で聞こえ、非常にいいと思った。
 内田龍麿も年相応に老けたが、ル・ボーと追放された老侯爵を演じた森源次郎もずいぶん年取ったと感じたが、演技全体に丸みがあって包むような温かさがあるのがよかったのと、ル・ボー役で途中台詞をちょっととちったところも愛嬌があった。
 同じように年輪を重ねたはずの、アダムと道化のタッチストーンを演じる磯貝誠は、昔も今も変わらない感じの若々しさを感じたのは不思議だった。
 ヒロインのロザリンドを演じた木村愛子には花があり、舞台全体を明るく感じさせ、シーリアを演じる須藤沙耶ともどもさわやかな若々しさがあって非常に良かった。
 この二人に反して、オーランドとその兄オリヴァを演じる吉岡健二と一川靖司は年齢を感じさせる顔で古びた恋人役という感じだが、そのアンバランスさが微妙に絶妙的な面白さがあったが、市川靖司はもう一つの役である羊飼いのコリンがはまり役であった。
 アミアンズ役の茜部真弓の唄は気分をほぐすのにふさわしく、うっとりと聞かせてもらってくつろいだ。
 デニス役とフィービーを恋い慕う若者シルヴィアスを演じる吉田恵理子は、シルヴィアスをヌボーとした表情の演技で演じ、渋い面白さがあってこれも心をくつろがせてくれた。
 という具合に、舞台全体の楽しさと、キャスティングの絶妙さを、面白く楽しませてもらった。
 上演時間は、途中10分間の休憩をはさんで2時間15分。

 

翻訳/木下順二、演出/冨士川正美
10月2日(金)14時開演、西池袋・スタジオPカンパニー稽古場、チケット:3500円

 

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