『NINAGWA・マクベス』の初演は、プログラムの上演記録によると1980年2月に日生劇場で、主演は平幹二朗と栗原小巻、85年にオランダのアムステルダムとイギリスのエディンバラでの海外公演を経て、その後87年から92年の公演までは津嘉山正種と栗原小巻、97年と98年の公演では北大路欣也と栗原小巻となっている。
自分が観たのは98年11月22日、埼玉県の川口リリアホールでの公演。その時の観劇日記には、北大路欣也のマクベスへの好意的な評価と、栗原小巻のマクベス夫人を絶賛し、全体の評価としても好評価をしながらも、緊張感に欠け、退屈さを感じたと記している。
今回の上演はその時以来で実に17年ぶりとなるが、今回の再演は市村正親のたっての希望によるものだという。
これまでの公演のすべてにわたってマクベス夫人を演じてきた栗原小巻に変わって今回は、田中裕子。
『NINAGAWA・マクベス』の初演時の評価は蜷川自身の言葉によれば散々なものであったが、海外での高評価で改めて見直され、今日ではその評価はゆるぎないものだと思われるので、演出内容ともどもここで改めて述べる必要もないだろう。また、個々の印象も98年の観劇日記に記しているので重複を避け、今回特に強く残った印象のみを記す。
ただ、前回の観劇日記にも書いているが、魔女を歌舞伎風に様式化しているところなどは、今回も前回同様に感心して観た。
主演の市村正親には全体を通してその台詞力を堪能することができた。
マクダフに倒されたマクベスが、嬰児のように丸く縮こまっていく姿も象徴的なものを感じさせるものがあった。
ヒロインのマクベス夫人を演じる田中裕子は、彼女の能面のような無表情さがマクベス夫人の強い口調と反比例的なところが却って強い印象を感じさせた。
前回にはなかったと思うが、マクベス夫人の部屋にチェロが置いてあり、マクベスからの手紙を読み終えた後、椅子に腰かけてそのチェロを静かに弾く所などは特に印象深いものがあった。
出演者では、マクダフを演じる吉田鋼太郎、ダンカン王の瑳川哲朗、門番の沢竜二、他に、バンクオーの橋本さとし、マルカムの柳楽優弥、ロスの前田恭明などが好演。
上演時間は、途中20分の休憩をはさんで2時間45分。
翻訳/小田島雄志、演出/蜷川幸雄、舞台美術/妹尾河童、衣裳/辻村寿三郎、
9月8日(火)13時30分開演、 シアターコクーン
チケット:(A席)9500円、座席:中2階・ML列12番、プログラム:1800円
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