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  青年団リンクRoMT公演、12人の役者で演じる 『十二夜』    No. 2015-014

 初めて訪れる初めての場所、初めての劇場、初めての劇団の公演とあって、いつも通り早めに到着。 現地には劇場らしきものはなく、マンションの前にチラシを掲示しているのでそこが目的の場所だとやっと分かる。 
 劇場はそのマンションの地下にあって、門扉はまだ閉まったままであるが、一人だけ若い女性が入口の石段に腰かけて本を読んでいた。 聞くともなしに話をしているうちに、彼女は大阪の吹田市から来ているという。 この公演を観るためにわざわざ来たというわけではなく、たまたまこの日のスケジュールが開いていて、当日券での観劇だという。ちなみに予約はすでに満席になっていたということであった(満席でも40数名程度)。 
 シェイクスピア関連の劇は結構観ているようで、蜷川幸雄のものや、ロンドンに行って観たこともあると言い、明日は六本木での自身のパーフォーマンスがあるという。コンテンポラリーダンスのようなものをやっているとの話であった。 このような偶然の出会いでの会話も観劇での別の楽しみの一つであるが、そこから先のドラマはない。 
 劇場は、平土間の舞台で、狭いながらも奥行だけはたっぷりある。 
 舞台後方には映画館の座席のようなシートが、前列に4席、後列に6席並べられている。 
 始まりは、舞台中央に置かれた額縁のようなパネルに「私たちのはこのように始まる」と映し出されて、イリリアの海岸の場面から始まる。 
 舞台前方の下手には、黒い衣装の女性が浮かぬ顔をして座っている。彼女は、オーシーノ公爵の廷臣キューリオやヴァレンタイン、それに警吏の役を務める。 
 彼女の浮かぬ顔の原因は劇の進行とともに、その演技の中で明らかになっていくのが、この劇の一つの新しい試みともいえる。 
 役柄は男性であるが、それを女性が演じていて、ちょうどヴァイオラが女性であって男性を演じているのと同じ関係にあり、彼女も実はオーシーノ公爵を慕っており、それがヴァイオラの登場で彼女に公爵の寵愛がすべて向けられ、自分の出番がなくなってしまい、それが彼女を憂鬱にさせていっている。 
 オリヴィアとセバスチャン、ヴァイオラと公爵がめでたく結ばれ、一同オリヴィアの邸内に入って行き、警吏役をしている彼女は、ひとり憂鬱そうに、黙って座席に座っている。 その姿は、映画館の館内で映画が終わった後の観客のようにも見える。 
 ヴァイオラを演じる李そじんのシザーリオは男性を感じさせず、言葉も心に伝わってこず台詞も間延びがしていて、全体的に間が空きすぎるきらいがあって退屈さを感じざるを得なかった。 
 太田宏のマルヴォーリオは力演という感じをありありと出しているふうで、一方、女優の菊池佳南が演じるフェステは頑張ってはいたが、演技的には物足りなかった。 
 それぞれ熱演しているのに、その熱気がこちらに伝わってこず、舞台に熱いものを感じなかったのは自分の感性の問題か、それとも世代的なギャップのせいだろうか。 
 意図的かどうかは別にして、12人の役者で『十二夜』を演じるという数合わせの洒落の面白さを感じた。 
 上演時間は、休憩なしで2時間35分。


翻訳/河合祥一郎、演出/田野邦彦
3月21日(土)14時開演、小竹向原・アトリエ春風舎、
 チケット:(シニア)1500円、全席自由席

 

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