高木登 観劇日記トップページへ

2015年の「シェイクスピア劇回顧」と「私が選んだベスト5」

●2015年のシェイクスピア劇回顧

  2015年のシェイクスピア劇、およびその関連劇の観劇本数は40数本となる。日程と予算の許す限りできるだけ観るようにしているが、なかには体調を崩して予約していて見ることができなかった作品もいくつかある。
 例年のことだが、偶然のようにして同じ作品の上演が重なることが結構あり、2015年は『ハムレット』と『マクベス』をそれぞれ6本観劇する機会があった(いずれも関連劇を含む)。

『ハムレット』
1. タイプス・プロデュース公演、パク・バンイル演出・上杉豪主演の『ハムレット』(1月)
2. 蜷川幸雄演出・藤原竜也主演の『ハムレット』(1月)
3. SPAC公演、宮城聰演出・武石守正主演の『ハムレット』(2月)
4. 新宿梁山泊公演、金守珍演出・広島光主演の『ハムレット』(2月)
5. Tama+project performance、丹下一構成・演出・主演の『Hamlets/ハムレッツ』(3月)
6. オールアクト公演、石山雄大演出・庄田侑右主演の『ハムレット』(11月)
   
『マクベス』
1. 森治美作・安井ひろみ演出、『「マクベス」上演―夢のつづき―』(3月)
2. アンドリュー・ゴールドバーグ演出、佐々木蔵之介主演の『マクベス』(7月)
3. 流山児事務所創立30周年記念公演、流山児演出・杉宏二主演の『マクベス』(8月)
4. 蜷川幸雄演出・市村正親主演の『NINAGAWA・マクベス』(9月)
5. 池袋演劇祭、劇団つばめ組公演、仲条裕演出・堀越健次主演の『マクベス』(9月)
6. ラゾーナ川崎プラザ9周年記念公演、西沢栄治演出・梶原航主演の『マクベス』(10月)

 創立35周年を迎えた板橋演劇センターは年初に『ヴェローナの二紳士』、7月に『ヘンリー六世・第二部』を上演し、シェイクスピア全作品の上演は残すところ「ヘンリー六世・第一部」と「ヘンリー八世」の2作となった。劇団主宰者の遠藤栄蔵は全作品の演出・出演をし、鈴木吉行と酒井恵美子の二人が同じく全作品に出演している。
 文学座が2014年シェイクスピア劇上演シリーズの最後の締めくくりとして、江守徹主演の『リア王』をアトリエで公演した。
 日程の都合上観劇できなかった水戸芸術館ACM劇場での松岡和子訳『十二夜』と、近藤芳正一人芝居『続・十二夜「わたくし、マルヴォーリオは」』は残念であった。特に一人芝居『わたくし、マルヴォーリオは』は、ティム・クラウチ作で2010年5月に、ロンドンやニューヨークで初演され、日本では今回が初演でもありぜひ観たいところであった。『十二夜』といえば、シェイクスピア・シアターが創立40周年記念として、創立メンバーの田代隆秀が32年ぶりにサー・トービーとしてシアターに参加したが、これは思うところあって観劇しなかった。
 『十二夜』は、他にジョン・ケアード演出で日生劇場で、また小劇場では"青年団リンクRoMT"の公演があり、『ハムレット』や『マクベス』に次いで多くあったように思う。
 定例的な公演としては、彩の国さいたま芸術劇場での蜷川幸雄演出によるシェイクスピア・シリーズとして、『ハムレット』、『ヴェローナの二紳士』、ネクスト・シアター、ゴールドシアターとの共演による『リチャード二世』が上演された。
 シェイクスピア劇の専門ではない劇団山の手事情社が創立31周年として、『テンペスト』と『タイタス・アンドロニカス』の2作を公演。
 今年21回目を迎えた"子供のためのシェイクスピア"が初演した『ロミオとジュリエット』を再演したのをはじめ、オックスフォード大学演劇協会(OUDS)の来日公演や、シェイクスピア・シアターが吉沢希梨を乳母役に迎えて『ロミオとジュリエット』を上演、また、少し変わったところで、タイプスがロミ・ジュリの翻案劇『Moon of Sea』を上演、上田邦義作による「能・『ロミオとジュリエット』」(初演)が国立能楽堂で上演されたのも注目すべきことであった。
 『リア王』では、文学座の江守徹以外に、2013年、14年と上演されてきた渡辺美佐子が演じる『リア』のファイナル公演、横浜シェイクスピア・グループ(YSG)の英語劇『リア王―グロスター家の事情―』や、楽園王公演の『リア王』などがあった。また、今一番活気があるといえるシェイクスピア劇を専門とするカクシンハンがBlack版とWhite版の2バージョンの『オセロー』を上演。
 江戸馨主宰の東京シェイクスピア・カンパニー(TSC)は、<鏡の向こうのシェイクスピア・シリーズ>の『フォルスタッフ』を上演したほか、ノーカット版朗読劇『魚心あれば水心』も特筆すべきものであった。
 例年の恒例行事として楽しみにしている明治大学シェイクスピアプロジェクトは12回目を迎え、『薔薇戦争』(第一部『ヘンリー六世』、第二部『リチャード三世』)を上演、第64回目となる関東学院大学シェイクスピア英語劇は『恋の骨折り損』を上演した。
 劇団鳥獣戯画の『三人で演じるシェイクスピア』は14年目位に入り、自分は初演を観たきりでその後は御無沙汰しているけれど、上演回数も215回となった。
 珍しいところでは、加藤健一事務所が『キング・リチャードⅢ』上演以来30年ぶりにシェイクスピア劇に挑戦し、『ペリクリーズ』を上演した。唐組公演の『鯨(げい)リチャード』は、リチャード三世との関連性に乏しい感じがして期待したほどの面白さはなかった。
 最後に、4月に亡くなられた荒井良雄先生の主催による"ヴィオロン文芸朗読会"での坪内逍遥訳シェイクスピア朗読劇は、2月の『末よければ総てよし』をもって終了したが、荒井先生の意思(遺志)を継いで、新地球座が新たに"荒井良雄娑翁劇場"として発足し、第1回目『十二夜』、、第2回目『じゃじゃ馬馴らし』が朗読上演されたことを付記しておく。

 

●私が選んだ2015年のベスト5(観劇順)

1. SPAC公演、『ハムレット』
2. 新宿梁山泊公演、『ハムレット』
3. 彩の国シェイクスピア・シリーズXネクスト・シアター公演、『リチャード二世』
4. 流山児事務所公演、『マクベス』
5. 明治大学シェイクスピアプロジェクト公演、『薔薇戦争』
   

●特別賞―自分にとって記憶に残る上演(順不同)

1. Tama+project 公演、『Hamlets/ハムレッツ』
2. 新国立劇場公演、オペラ 『フォルスタッフ』
3. 「能・『ロミオとジュリエット』」初演
4. 東京シェイクスピア・カンパニー朗読劇、『魚心あれば水心』
5. ヴィオロン文芸朗読会、朗読劇『末よければ総てよし』

 

>> 目次へ