高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  シェイクスピア・シアター公演 『ハムレット』      No. 2014-47
 

冒頭部、城壁の上の夜警の場面、舞台下手の前方部に椅子に座ったハムレットが本を読んでいる。 
ハムレットはこの夜警の場面の間ずっとそこにいて、夜警のマーセラスやバナードの台詞を一緒に唱和する。 
ホレイショーやマーセラスらが退場した後も同じ姿勢でその場に残り、クローディアスの謁見の場に臨む。 
このような目新しい演出の工夫があるものの、自分の想像力の乏しさからか、残念ながらそこに特別な意味を感じることができなかった。 
『ハムレット』をそのまま上演すれば4時間はゆうに超えるので台詞や場面のカットはごく普通のことであるが、この舞台で大胆なカットというよりかなり重要な部分の台詞が抜けていて、少し疑問に感じることもあった。 
レアティーズがパリに旅立つ日、最初にオフィーリアだけが出てきて、肝心のレアティーズはかなり遅れて出てくる。それだけでなくポローニアスの見送りの説教の台詞も完全に削除されている。 
ポローニアスを演じる滝本忠生の台詞の滞りを見ていると、その負担を減らすために意識的に台詞をカットしているのではないかとおもえるほどであった。彼は墓掘の道化役も兼ねており、そちらの方では持ち味を生かしていたので残念な気がする。 
全体的には、奥山美代子(文学座)を抜擢しての『ハムレット』ということもあって、彼女のハムレットの印象だけが強く残る舞台ともいえる。
しかしながら、このところの出口典雄の台詞・演技の所作の方法が、地面に向かって台詞を吐くという仕法で、劇全体が暗く、楽しさというものがない。特に有名な独白部分の「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」の台詞は、大地に身体を伏せ、顔も地面に向けたまま語る。 
ハムレットの所作も感情を噴出して痙攣をおこしたような動きを見せ、台詞もヒステリックに聞こえる。 
その演技自体には迫真的なリアルさがあるものの、共感し難いハムレットであった。 
舞台全体にメリハリがなく、だらだらと場面展開していった感じで、ハムレットの奥山美代子とクローディアスを演じる宇野幸二郎を除いて存在感が希薄であった。 
出演は、ほかに槇由紀子(ガートルード)、藤井映伍(ホレイショー)、文学座の伊藤安那(オフィーリア)、同じく文学座の清水圭吾(亡霊、旅役者、フォーティンブラス)、高山健太(マーセラス、ギルデンスターン、オズリック)など。
上演時間は、休憩10分をはさんで2時間50分。

 

(訳/小田島雄志、演出/出口典雄、12月3日(水)18時半開演、俳優座劇場にて観劇。
チケット:4500円、 座席:3列10番)

 

【追 記】 
観劇の翌日、劇団シェイクスピア・シアターの出演者の一人、Nさんから観劇の礼状のはがきが届いた。
こんなことは初めてであるが、このような熱心な座員がいることに救われる思いであった。

 

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