高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  プラチナネスクスト第10回公演 『真夏の夜の夢』      No. 2014-46
 

「戦争が終わった!!」という舞台裏での歓声に続いてシーシュウスが豪華な衣装をまとって登場し、続いて純白のドレスを着たヒポリタがゆっくりと登場してきて、華やかに舞台が開ける。
オーソドックスな展開の中にもいくつもの遊びの工夫がなされていて観ていて飽きない舞台であった。 
パックは3人の女優が演じ、この劇団がシニアのみで構成されているところから、歳のせいか、妖精の王様オーベロンの人使いが荒いので疲れると愚痴るところなどは、演技者の実年齢で現実味を感じさせる。 
パックと妖精たちの出会いでは、パックが3人いることで妖精たちが、「もしかして、あなたは『マクベス』の3人の魔女?」と問いかけるジョークでは思わず笑ってしまうが、他にもこの劇中ではシェイクスピアの他の作品の台詞のもじり―『ハムレット』の「生きるか、死ぬか、それが問題ではない」や『ロミオとジュリエット』のロミジュリの愛の台詞など―が飛び出してきて、シェイクスピアを二重三重に楽しませてくれた。
アテネの職人たちの役では機織屋のボトム役を除いて、クインスをはじめすべて女性が演じたのも面白かった。 
そのボトムを演じる高森秀之は体つきからしてボトム役にぴったりで、演技においても精彩を放っていて、生き生きと楽しそうに演じているのが好ましく感じた。 
劇中劇でボトム演じるピラマス役の恋人役シスビーを演じるフルートの大林弘子も、ピラマスの死を嘆いて自殺する場面ではピラマスの「死ぬ、死ぬ、死ぬ」の繰り返しに負けず劣らず、「いざ、さらば」を幾度も繰り返してなかなか死なず、そのことで大いに笑いを誘うのも一興であった。 
登場人物の衣裳が全体的にカラフルで、特に、妖精たちの衣裳では人間界で侍女役を務める竹野朱美と高橋マナミの二人は、妖精界ではそれぞれ「からしの種」と「あざみの種」を演じて、バレリーナの衣裳でバレーの所作を交えての演技で目を楽しませてくれた。 
40歳台から70歳台までのシニアたちで構成される「演劇集団プラチナネクスト」は、2009年に文学座が開設したプラチナクラスの6か月間の俳優養成コースを経た卒業生有志の集まりで、2010年11月に旗揚げ公演して以来、今回が10回目というから大体年2本のペースで公演を続けていることになる。 
正規の養成訓練を経てきたとはいえプロではないアマの集団であるが、文学座という後ろ盾もあってその演技の水準は非常に高いと感じた。 
高齢者の演劇集団では、蜷川幸雄の「さいたまゴールド・シアター」(55歳以上)、流山児祥の楽塾(女性だけ、平均年齢61歳)などがあるが、共通して言えるのは、演じる姿勢が自らが楽しむということで観客をも楽しませるということにつながっているのではないかと思う。 
演じる役者の年齢と役柄の年齢とのギャップ、落差が却って面白みを添えることもあってそれも観ていて楽しい。
今回、このプラチナネクストの『真夏の夜の夢』を観て感じたのは、演じる役者が劇中劇のアテネの職人たちとまったく同じく、純粋無垢に夢中で演技を楽しんでいるということであった。 
最後のエピローグは、パックだけでなく全員が登場してきて観客に語るところなどは感動的ですらあった。 
この舞台に関しては、楽しく観ることができ、心に触れる温もりを感じ、気持を豊かにすることが出来たことで、出演者のみなさん全員に最高の賞賛を贈りたい。 
上演時間は1時間50分。

(演出・脚本/加納朋之(文学座)、11月30日(日)12時開演、
中目黒キンケロ・シアターにて観劇。全席自由。 チケット:2500円)

 

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