高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  カクシンハン公演 『ハムレット』      No. 2014-45
 

演出の木村龍之介は『ハムレット』を演劇のフルマラソンに譬えているが、近年のマラソンがトラックレースのようにスピード化しているように、カクシンハンの『ハムレット』も3時間の上演時間にもかかわらずテンポが速く、あっという間に走り終わった感じがするものであった。 
公演のチラシで出演者の顔触れをみて自分なりのキャスティングを想像してみたが、ガートルード役の俳優が思いつかなかったが、一番のサプライズは、ホレイショーという重要な役も演じ、旅役者の一人にも扮している劇団AUNの杉本政志がこの役を演じたことであった。
そのガートルード役では特に女性的な品を作るでもなく地のままで演じ、ホレイショーの登場とダブる場面では代役が衣裳だけ合わせて顔は見せずに登場し、声はホレイショーの杉本政志が顔を本で隠して出すという見え見えの演技が、おかしみがあって面白くしていた。 
河内大和のハムレットは想定通りの役で、彼自身がハムレットの佯狂を楽しんで演じているようで、その極端なまでの佯狂の演技が、憂鬱なハムレットというより精悍で行動的なハムレットを感じさせるものであった。 
冒頭部で父ハムレット王の死体を抱いて嘆き悲しむ演出がこのハムレットの特徴を予兆しているように思われた。 
クローディアスを演じる田代隆秀も予想通りのキャスティングであったが、重厚で存在感を感じさせる一方で、ハムレット王の亡霊にも扮し、亡霊として登場するときに兜の代わりに防毒マスクをつけていた。 
狂乱のオフィーリアを演じるのは真以美しかいないだろうと思っていたので、これも想定内の配役であったが、フォーティンブラスをも演じたのは想定外であった。しかし、フォーティンブラスの衣裳にもサプライズがあり、ウェディングドレスのような白い衣裳で、フォーティンブラスを女性に見立てての演出かと思わせるものであった。 
オフィーリアとレアティーズの関係は兄妹というより恋人同士のような関係であった。 
舞台には何台ものモニター受像機が配置され、劇中劇を見物する場面ではクローディアスの顔がアップで映し出されたり、’To be or not to be’の独白の台詞の文字が映し出されたり、映像が要所で活用されていた。
キャスティングのサプライズや劇中の遊びの演技で楽しませて時間の過ぎるのを忘れさせ、この劇のテンポを軽快なものにして3時間を短く感じさせた。 
出演は、ポローニアス役の高橋克明(文学座)など、総勢18名とにぎやか。 
狭い客席は満席で、老若男女さまざまな人が押し寄せ、この劇団の人気ぶりを伺わせるに十分な熱気(この季節に暖房ではなく冷房をかけるという熱さ)であった。 
上演時間は、途中休憩10分をはさんで3時間。

 

(訳/松岡和子、演出/木村龍之介、11月19日(水)19時、新宿・SPACE雑遊にて観劇。
チケット代:3500円)

 

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