高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  第11回明治大学シェイクスピアプロジェクト 『組曲 道化と王冠』      No. 2014-43
 

第一部 『ウィンザーの陽気な女房たち』、第二部 『ヘンリー五世』

本題に入る前にまず余話から。 
自分はAブロックを予約確保出来ていたのだが、例年早くから来て並んでいるのが分かっているので少しでも前方の席を取りたいと相当早めに来たが、会場受付時間が4時半からというのに到着した3時25分にはすでに3人の方が並んでいた。
年々、この明治大学のシェイクスピアプロジェクトは人気が上昇していて、3日間5ステージで4000人の観客を見込んでいるというその盛況ぶりがうかがい知れる。 
開演2時間前から待っていた甲斐あって会場内には一番乗りで、最前列中央の席をゲットすることができた。 
隣の席は息子さんがこの舞台に出演するというお母さんで、明日も来られるということだった。 
受付ではプログラムやチラシの束と一緒に、王冠が描かれた手作りの紙の小さな小旗が一緒に添えられていて、劇中それを振るという趣向があった。

開演まで2時間待っただけの甲斐があった素晴らしい舞台であった。 
まず、この2作品をつなぐ構成が非常に優れていて、そのうまさに感心した。 
第一部は、ハル王子のヘンリー五世としての国王就任の戴冠式を祝ってフォルスタッフをはじめとしたかつての王子の仲間たちが、余興として『ウィンザーの陽気な女房たち』を演じるという仕掛けで始められる。 
無事この劇が終わった後、再びヘンリー五世が登場し、フォルスタッフに「おまえなど知らぬ。お祈りに日々をすごすがいい、ご老人、りっぱな白髪をしながら道化、阿呆のまねは見苦しいぞ!私は長いあいだおまえのような男の夢を見ていた」(小田島雄志訳で代用)と言って彼を追放する場面で第一部が終わる。 
この終わりをもって第二部の『ヘンリー五世』につないでいくわけだが、この連続性の巧みさは、実は昨年の公演『ヘンリー四世』二部作ともつながっているのだった。 
第一部が劇中劇という構造の中で演じられることを象徴して、プロローグとして劇中のピストル役が前口上の中で「この世は舞台だ」という台詞を述べるのも印象的であったが、第二部終了後にふたたびこのピストルが、今度は台詞なしでエピローグを務める趣向も見事だと思った。 
昨年『ヘンリー四世』二部作でフォルスタッフを演じた橋口克哉君はその体格から自然体で役を演じられていたが、今年のフォルスタッフはどんなフォルスタッフになるのか、それが第一の期待でもあった。 
帰宅後、プログラムのキャスト紹介を見て驚いたのは、なんと昨年ハル王子を演じた木村圭吾君がフォルスタッフを演じているではないか。 
それで今年特に印象に残ったキャストを昨年のキャストのリストを比較して並べてみると結構面関連性のある役を引き継いでいるということに気付いた。 
愛敬あるフォルスタッフを演じた木村圭吾君を筆頭に、クイックリーの橋本美優さんは昨年はドルを演じており、ヘンリー五世の小渕竜治君はヘンリー五世の弟である昨年ランカスター公ジョンを演じていて役柄として身近な関係にある。 
そのほかにも今回印象に残る演技をしたピストルの大津留彬弘君は、昨年はグロスター公ハンフリーとモーティマーを演じ、今年、演出とフルーエリン役の二つをこなした浦田大地君は昨年バードルフとモートンを演じていた。 
このような連続性や継続性を見るとき、毎年観続けるという喜びと楽しみを大いに感じることができるのだった。 
話があらぬ方向にそれていったが、第一部と第二部の構成の巧みさの特徴として、第一部が喜劇にふさわしい軽妙な明るさとテンポの速い展開であるのに対し、第二部は歴史劇としての荘重な雰囲気を持った演出で、そのコントラストが対照的であった。 
また、第二部では第一部で登場したクイックリー、ピストル、ニム、バードルフ、ロビンなどが登場することで一部と二部の連続性を自然に感じることが出来ただけでなく、一部で登場した役者が二部では役を変えて出てくるのに気付いて、前の場面で誰を演じていたかを捜し当てるという楽しみを味わうこともできた。 
一部、二部ともに90分の上演時間であるが、あっという間に時が過ぎてしまったという感じであった。 
なお、演出のバンドオブブラザーズというのは、プログラムによれば『ヘンリー五世』の中の’We few, we happy few, we band of brothers’ からとったものだという。 
翻訳チームのコラプターズも『十二夜』の台詞からとったものであるが、このようなシェイクスピアを意識した命名に新鮮さと若さの感性を感じる。 
昨年から続く英国歴史劇は、来年も引き続いて継続されることが早くも決まっていて、三部作の完結編を『薔薇戦争の男たち・女たち』(仮題)として、『ヘンリー六世・第三部』と『リチャード三世』が上演されるということである。 
そのコンセプトもしっかり決まっていて、「歴史の大波の中で翻弄される女たち男たちの愛憎物語として、薔薇戦争をあらたにとらえなおす」という。今から楽しみでならない。

 

【私の観劇評】  
演出、舞台構成(美術)、衣裳、音楽、演技、翻訳の総合評価と、なによりも元気をもらえたことで、★★★★★

(演出/チーム・バンドオブブラザーズ{浦田大地、田所早紀}、
プロデューサー/清水咲希、監修/横内謙介、 
11月7日(金)17時30分開演、明治大学駿河台キャンパス・アカデミーホール、
最前列中央の席にて観劇)

 

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