高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  タイプス第62回公演 『マクベス』       No. 2014-36
 

会場時に受け取ったプログラムのキャスティングを見て少し驚いた。 
そこにはダンカン王の名前がなく、門番、マクダフ夫人なども載っていない。 
タイプスとしてはめずらしく少人数の構成である。 
開演時の挨拶で、上演時間は1時間25分との紹介。 
ダンカンがいない、門番がいない、マクダフ夫人がいない、となるとどのような演出になるのか興味津々となる。 
3人の魔女の登場は、ほとんど原作にそった素直な演出で始まる。 
戦況の報告はダンカンの息子マルカムが受け、それを舞台に登場することのないダンカンに伝えるということで、ダンカンの存在を表現する。 
観終わってみれば『マクベス』のダイジェスト版という感じを受けるコンパクトな作品である。 
元々今回の『マクベス』上演は、公演予定の『煙が目にしみる』が上演権の問題(?)でその差し替えとして急遽決まったものだった。 
その影響もあってか今回は出演者の集まりが悪く、キャストの不足となっての窮余の策の演出となったものであるが、災い変じて福となすではないが、結果的に面白い演出となっていた。 
マクベスの新本一真、バンクォーの藤村忠生、そして魔女3の多田智美を除いて出演者全員が20代前半という若さで、全体的にシェイクスピア劇としての経験不足からくる未熟さが感じられたが、それを補うひたむきな姿勢は評価していいだろう。 
特に、マクベス夫人を演じた山下カオリは新国立劇場研修所第7期生として栗山民也の指導を受け、イギリス王立演劇学校RADAの講師から学んで今春卒業しただけあって、役の力不足はあったものの好演であった。
タイプス公演で感心するのは、たとえスタジオ公演であろうと、出演者の顔写真と簡単な経歴を載せたプログラムを無料で配布していることである。これは観客、出演者両方にとって好ましいことである。 
特に、若い俳優さんたちにとっては大いなる励ましになるであろうし、観客の方でも今後の活躍を期待して見守っていくのに大いに参考になる。 
今回の上演は窮余の策から生まれた結果論的なものであるが、今後のスタジオ公演の一つの方向性としての暗示を含んでいるように思われる。 
シェイクスピア劇を中心にしているタイプスとしては、この経験を生かしてこのスタジオ公演を活用し、劇場公演と合わせてシェイクスピア劇全作品の上演にチャレンジして欲しいものである。

 

(構成・演出/パク・バンイル、9月14日(日)17時開演の部にて、
両国のスタジオ・アプローズにて観劇)

 

>> 目次へ