高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  地点 『コリオレイナス』      No. 2014-34
 

この作品は2012年ロンドンオリンピックの年に、シェイクスピア全作品上演の一つとしてグローブ座に招聘されて上演したのを皮切りに、その後数か国で依頼を受けて公演を続けてきて、今回“あうるすぽっと”の<シェイクスピアフェスティバル2014>に招かれ、これが最後の上演になるということであったが、自分は奇しくもその楽日に観劇することになった。 
演出の三浦基が主宰する”地点“についての予備知識もまったくなく、初めて観るという好奇心の方が強かったが、観劇の感想としてはそのエキゾティックさにおいて海外での評価が高かった(?)というのは頷けるものの、台詞回しをはじめとする演技所作の新奇性については必ずしも肯定的に観ることはできなかった。 
特に、台詞回しは多分に作られた言い回しで非日常的な語り口であり、海外においては日本語が理解されないという点においてその発声法を耳にする物珍しさはあるかもしれないが、自分にとってはノイズにしか聞こえず、目をつぶって聞いていると脳内で耳鳴りがするような不快感が残ったのは自分だけであろうか? 
その意欲的な演出は、独創的かつ実験的ともいえるもので、趣向そのものについては面白いものがあった。 
コリオレイナス一人だけが登場人物として配役が特定化され、その他、手に能面のような仮面を持ったコロス役が4人、時に応じていろいろな人物を演じる。 
開演とともに、一人が腰を折り曲げて背中に一人の男を背負い、他の二人が背負われた人物の両足をそれぞれ1本ずつかかえ上げて舞台上を練り歩く。 
背中に背負われていた人物はコリオレイナスで、背中から降りた彼は虚無僧姿をしており、深編笠を被り、首には袈裟を懸け、手には尺八の代わりにフランスパンを持っている。 
コリオレイナスは、母親ヴォラムニアの説得に屈してローマと和平を結び、裏切り者としてオーフィディアスに殺され、大地に大の字になって倒れる。 
倒れたコリオレイナスをオーフィディアスが何度も背中に背負おうと繰り返しては、そのたびに失敗する。 
もしこのとき、コリオレイナスを背中に背負うことに成功しておれば、舞台は初めの光景に戻ることになり、この舞台が円環構造を示すことになるが、それを拒否するかのような終わり方をする。 
コリオレイナスの首に懸けた袈裟をそのまま裏返しにして彼の顔を覆い、コロスはそれぞれ両手を肩の高さにあげ、舞台前方観客席に向かって伸ばして、沈黙の静寂の内に終わる。 
ときおり、衣類を無造作にくるんでその先っちょを紐で縛って、それを犬のように引きずって舞台を一周する「男」が登場するが、意味があるような、ないような、象徴的な感じを抱かせたのもこの演出の特徴の一つであった。 
自分には、日本向きというより海外での上演向きという感じが強かった。 
コリオレイナスに、石田大、コロスとして安部聡子、窪田史恵、河野早紀、小林洋平、男は小河原康二。 
上演時間は、休憩10分を入れて2時間10分。 
この日の座席はC列が最前列であった。

 

(翻訳/福田恆存、演出/三浦基、音楽監督/桜井圭介、8月31日(日)15時開演の部、
池袋“あうるすぽっと”にて観劇、チケット:3500円、座席:C列9番)

 

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