2014英国観劇旅行
 
  No.4 Medea 『メディア』      No. 2014-33-04
 

初日に観た『るつぼ』と同じく、女性演出家による上演で、しかも同じように衝撃度の高い演出であった。 
衣裳、舞台装置は現代に置き換えられているが、ギリシア悲劇としての真髄を十二分に堪能させてくれた。 
特に舞台装置が斬新で素晴らしいと思った。 
半円形の張り出し舞台の後方、上手には二階の舞台に通じる階段があり、下手には洗面所が見える。 
舞台奥は二層構造になっていて、はじめは下の階にはカーテンが引かれており、二階は全面ガラス張りのショールームのように見える部屋で、舞台全体が大きな部屋になって見える。 
黒人俳優ミカエラ・コエル(Michaela Coel)が演じる乳母が、語り部としてこの物語の悲劇の発端を語り終わると、下の部屋のカーテンが開かれ、舞台奥に木立が立ち並ぶ森の風景となる。
その舞台奥の奥で、メディアの叫ぶ声が聞こえ、部屋の中に入ってきた彼女が自分を裏切った夫ジェイソン(イアソン)への復讐の言葉を吐く、そのメディアを演じるヘレン・マクロリー(Helen McCrory)の台詞のド迫力がすさまじい。
プログラムでキャストのプロフィールを見ると、彼女はマクベス夫人を演じてShakespeare’s Globe Richard Burton Most Promising Newcomer Awardを受賞しており、まさにマクベス夫人を思わせる演技でもあった。
またメディアの夫ジェイソンを演じるダニイ・サパニ(Danny Sapani)は『マクベス』のタイトルロールを演じたことがあり、偶然なのか意識的に組み合わせたのかは分からないが、面白い組み合わせだと思った。
『メディア』は、蜷川幸雄の『王女メディア』との比較でどのように演出されるか、特に最後の場面に興味があったが、原作とも蜷川幸雄の演出とも異なっていた。 
機械仕掛けの装置は登場せず、メディアが、自分が殺した二人の子供を詰めた黒い袋を両手に一つずつ持って、それを引きずりながら暗い森の木立のなかへと消えていくという終わり方で、これもまた印象的であった。 
上演時間は、休憩なしで1時間30分(19:30−21:00)。

 

<私の感激満足度> ★★★★★ 
<キャステイング> 
乳母:ミカエラ・コエル(Michaela Coel)
メディア:ヘレン・マクロリー(Helen McCrory)
ジェイソン:ダニイ・サパニ(Danny Sapani)
コリントの王クレオン:マーティン・ターナー(Martin Turner)

 

(原作/エウリピデス、脚本/ベン・パワー(Ben Power)、
演出/キャリー・クラックネル(Carrie Cracknell)、
8月20日(水)夜、ナショナル・シアター(オリヴィエ劇場)にて観劇、
チケット代:35ポンド、プログラム:3ポンド、座席:ストール(1階席)D列39番)

 

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