高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  ヴィオロン文劇朗読会 『コリオレーナス』      No. 2014-31
 

「第26回 SP音盤と日英文芸朗読観照会」の第一部では、逍遥シェイクスピア名場面朗読劇として『コリオレーナス』が、久野壱弘のコリオレーナス、蔀英治のオーフィディアス、北村青子のヴォーラムニヤによって朗読された。
いつものように最初はSP音盤による音楽鑑賞からであるが、第一部の内容にふさわしくベートーベンの『コリオラン』を聴くことから始まった。
朗読劇『コリオレーナス』の場面構成は、大きくは3つの逍遥場面に分かれる。 
執政官に選出されたものの、その傲慢さゆえに追放の身となるコリオレーナスが母親のヴォーラムニヤとの別れの場面がその一、追放されたコリオレーナスが宿敵オーフィディアスを頼って彼に受け入れられ、ローマに復讐する決意をする場面がその二、最後はローマを攻め立てるコリオレーナスに和睦を歎願する母親との対面、そしてヴォルサイ国への裏切り行為としてオーフィディアスに殺される場面までである。 
この3つの場面で、『コリオレーナス』の全体像が確然とつかめるようになっている構成がまず素晴らしい。 
朗読者は三者三様の声質でそれぞれに特徴的であるが、この劇の悲劇性を高めたのは北村青子のヴォーラムニヤであった。台詞を語る前にすでにその表情、所作に、悲痛さが満ち満ちんとしていて、台詞を聴く前に胸が熱くなってきた。それはとりもなおさず、久野壱弘のコリオレーナスの台詞回しによっても増幅されてくるものだった。
久野壱弘の声高な声色とは対照的な蔀英治の抑制されたような声質のアンサンブルが、この朗読劇に多様性を持たせ、最初から最後まで気を抜くことなく聴かされた。 
台本構成は、この朗読会の主宰者である荒井良雄先生。

第二部は、辻邦生文学朗読劇場で、尾崎廣子朗読による『花のレクイエム』より「向日葵 八月」。今回をもって『花のレクイエム』完読となる。いつものように美しい声で魅了し、作品そのものも美しく感じさせてくれる。 
次に今回から『十二の風景画への十二の旅』が始まって、「金の壺」を倉橋秀美が朗読。メリハリの利いた朗読で、物語の中にぐいぐいと引き込まれていき、楽しませてもらった。 
辻邦生は自分の愛読する作家でもあり、朗読を聴くことで辻邦生の新たな世界を感じることができ、この文芸朗読会の中でも楽しみな企画の一つである。

第三部は、石井麻衣子による水上紅の詩誌『私のすばる』創刊35周年記念号より、「空の子ども」ほかの詩を朗読。清明な感じで静かに聞き入った。

この日は、8月6日と9日の原爆記念日のはざまの日でもあり、また15日の終戦記念日の前ということもあって、最後にプログラムの予定外に荒井良雄先生が「海行かば」の日本語の歌詞と御自身による英訳とで絶唱された。

朗読会終了後、出演者と参加者10数名で阿佐ヶ谷駅前の居酒屋で打ち上げが行われ、声をかけてもらって自分も参加した。出演者との会話以外に、シェイクスピア・シアターの第一期生高橋正彦氏、滝本忠生氏、佐藤昇氏らとも親しく話を交わすことができ、有意義な一夜であった。

 

(8月8日(金)18時30分開演、阿佐ヶ谷の名曲喫茶ヴィオロンにて。
朗読会参加費:1000円)

 

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