高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  演劇企画集団 THE・ガジラ WS公演 『ロミオとジュリエット』       No. 2014-17
 

ロミオとジュリエットの結婚と死という主筋は原作に沿う構成でそれを縦糸にして、伏線としての横糸は鐘下辰男のまったくの創作からなり、一種狂気の世界が展開する。
観客席に鉤形に囲まれた舞台は、ボクシングの試合のリングのように上下二段、細いロープで囲われている。 その囲いと観客席の距離は1mと離れていないので、囲いの外での演技は観客席と間近に接することになる。 しかしながら、そのロープの内側と外側とが何を表象するかは見えてこなかった。 舞台全体は暗い上に、全体は黒一色のモノトーン。
舞台中央には白いシーツで覆われた死者(と思われる)が横たわっていて、その後ろに一人の男が神経質な素振りで腰かけて椅子に腰かけている。そしてその背後には、剃髪した坊主頭の女性が足首まである鮮明なブルーのワンピースの姿で黙ったまま立っている。
白いシーツで覆われた死者は冒頭の場面ではモンタギューとして見ることができるが、実はジュリエットであった。劇が始まる前ではジュリエットであろうと思わせるのであるが、それをモンタギューの葬儀の場で始まらせるという意表をついておいて、実際にはジュリエットであったということで劇の終末を予兆するところが心憎い。
そのようにして場面はロミオの父モンタギューの葬儀から始まる。
その葬儀の場でロミオは恋するロザラインをレイプしようとし、妨害されて失敗したことに絶望し、ナイフで自ら手を傷つける。
ロミオの母は彼が幼い時に発狂してすでに死んでいる。
坊主頭の青い服の女はその亡くなったモンタギュー夫人であることが話しの展開の中で分かってくる。
ロミオはモンタギュー夫人の妹によって育てられ、その叔母はモンタギューを愛していたが彼女の姉が自分の欲するものすべて妹から奪い、彼女にとっての生きがいはロミオしかいない日陰の存在である。
モンタギュー夫人は使用人と通じその後発狂して死ぬのであるが、夫のモンタギューは最後まで妻につくしながらも、この場面の冒頭ですでに彼も亡くなっているというわけである。
モンタギュー夫人には台詞がないが、場面の要所々々に登場してくる。
一方のキャピュレット家側も複雑な構造となっている。
キャピュレットは婿養子で、絶えずヒステリックに声を張り上げる夫人に頭が上がらず、難題にぶちあたるとすぐトイレに逃げ込むのが彼の習慣となっていて、そのことも妻が非難する的となっている。
ジュリエットには実は自殺した姉がおり、その原因は母親のキャピュレット夫人にあるようであるが、直接的な原因には触れられず、彼女は現われては母の心を乱す。
ジュリエットは姉の死のことがあって引きこもりとなっているが、今ではただ一人の跡取り娘である。
ロミオが愛すロザラインは、ジュリエットの従弟ティボルトの妹という設定になっており、ティボルトは近親相姦的に妹のロザラインを愛していて、そのことで妹をレイプした(と思っている)ロミオのことが許せない。
キャピュレット夫人は軟弱な夫には久しく愛想をつかしていて、甥のティボルトを愛していて彼に言い寄るが受け入れてもらえない。
ジュリエットの誕生パーティの日に、大公の血筋に連なるパリスが求婚する。
パリスはなんと50歳で、キャピュレットよりも父親以上の年上である。それでも彼はキャピュレット夫妻を「お父さん」「お母さん」と呼ぶのにやぶさかでないというだけでなく、自分は次男坊だからキャピュレット家の養子になっても構わないという。
ロミオとジュリエットの出会いはこの誕生パーティにおいてであるが、それは愛に惹かれてのことではなく、 二人とも絶望的な心情の中で、互いに死を求めあっていたことから関係が始まる。
主筋としてのロミオとジュリエットの愛、ロミオがティボルトを殺し、ジュリエットはパリスとの結婚を逃れるために神父ロレンスの与えた毒薬で仮死状態になり、それを知ってロミオが自殺し、ジュリエットが後を追おうとする一連の出来事は原作に沿っているが、ジュリエットに短剣を投げ渡すのは自殺した姉である。
そこで舞台は暗転しモンタギュー家とキャピュレット家の和解の場面のないまま、宙ぶらりんの気持を抱かせて苦い味を残して終わる。
この創作劇としての『ロミオとジュリエット』の面白さ、興味は、複雑に絡み合ったサスペンス的な人間関係を劇の展開の中でひも解いて読み取っていくところにある。
絶叫調の台詞回しや、効果音の金属的な爆音には耳を悩まされるところもあったが、一味違う異色のシェイクスピアを味わうことができた。
この作品は、鐘下辰男が行っている年間ワークショップの中で出会った20代から50代までの出演者15人によって演じられた。
上演時間は、休憩なしで2時間10分。

(原作/ウィリアム・シェイクスピア、作・演出/鐘下辰男、5月9日(金)昼、
下北沢・小劇場B1にて観劇。
チケット: 金曜特割で3200円。全席自由席、最前列で見る)

 

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