高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  “日本の30代”自主公演 『十二夜』      No. 2014-12
 

これまでに自分が観てきた『十二夜』の中では屈指だと絶賛できるほど、楽しく、愉快で、面白かった。
最初に出演者全員が登場してきたのを見た時、各自の特殊なメイクや衣裳、それに全体の雰囲気がチンドン屋のそれを感じさせ、そこでもう何かもうわくわくした気分にさせられた。
チンドン屋のイメージは自分にとって、どこか郷愁のなつかしみとお祭り気分を起こさせてくれるからでもあった。
全体を通してのテーマソングとなる道化フェステの「ヘイ、ホウ、風吹き、雨が降る」の曲を、劇の始まりで全員が思い思いの楽器を持って演奏し、しばらくして、この音楽を「恋の糧」とするオーシーノが「止めてくれ」と立ち上がったところで舞台が始まるという趣向。
そしてすべてが終わったときにも、再び全員が最初のスタイルでこの曲を演奏し、全員でこの音楽を歌う。
この全員で歌う最後の締めが何とも感動的で、胸にジンときた。
普通はフェステが一人でこの歌を歌って幕となるのだが、それを全員で歌ったところにこの“日本の30代”のユニットの性格を読み取ることができるのではないかと思う。
“日本の30代”は、一昨年(12年)夏、シアターコクーン公演で松尾スズキ作・演出の「ふくすけ」を30代の俳優10人が共演した後、飲み会で今回ヴァイオラを演じた大人計画の平岩紙が「一緒に芝居をやったら面白いんじゃないか」と言いだしたことが実現して、ユニットを組んだことに始まるという。
出演者が別々の劇団に所属するという異質性と、小劇場を舞台に活動する同世代(30代)という近似性の共感から生み出される親和力が、この舞台を楽しく魅力的なものにしている一つの要因ではないかとも思う。
「ふくすけ」の出演者10人に加えて、セバスチャンを演じた冨川一人がゲスト出演で、総勢11人の出演である。
チラシには、全員これまでシェイクスピアとは縁もゆかりもなく、『十二夜』を読んだことすらないと書いてあったが、白紙の状態で先入観がないのが却ってこれまでにないシェイクスピアの面白さを引き出しているようにも思う。
演じられる登場人物はそれぞれ特徴があってみな面白かったが、なかでも延増静美が演じるオリヴィアの面白さは秀逸で、一昨年11月にロンドンで観たティム・キャロル演出によるマーク・ライランスンが演じたオリヴィアを思い出させた。
彼女の所作、反応の一つ一つが面白いのに加えて、衣裳の奇抜さに笑わされた。
兄の喪に服して黒い衣裳を着ているその下に、紅白の縞模様のハイソックスをはいていて、時々それをこれ見よがしに誇示するのもおかしかったが、セバスチャンと秘密の結婚しようとする時に着替えた、フリフリの膝上までの裾丈のピンクのワンピースのコスチュームには度肝を抜かされ、思わず失笑した。
平岩紙は少年俳優のような初々しいさわやかさを感じさせるヴァイオラで好感を持てた。
マルヴォーリオをはじめ船長、神父、役人など八面六臂の活躍の町田水城、顔半分だけメイクした道化のフェステの竹口龍茶、異風な眉毛と髭を顔に描き込んだオーシーノの井澤崇行、そのほかマライアの鈴真紀史、サー・トービーの少路勇介、サー・アンドルーの井本洋平、女優が演じる井内ミワクのフェービアンや羽鳥名美子のアントーニオなどのメイクや自由闊達な演技を愉快に楽しむことができた。
上演時間:休憩なしで2時間10分。
座席は整理番号2番で一番先に入場でき、自由席の最前列中央をゲット。

 

【感激度】 ★★★★★

 

(訳/小田島雄志、演出/鵜山仁、4月20日(日)昼、下北沢・駅前劇場にて観劇、
チケット:自由席3300円)

 

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