高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  劇団東演公演・ベリャコーヴィッチ演出の『ハムレット』      No. 2014-07
 

前回の公演はまさに東日本大震災の当日が初日であった。
僕はその翌々日の13日に観劇したが、本来満席のはずの席が2割程度空いていたのを思い出す。
今回はその再演であるが、いっそうの進化と深化の変化を感じさせ、刺激的な舞台を楽しむことができた。
出演者に一部変更があり、主要人物ではクローディアスを前回ベリャコーヴィッチが演じたが、今回は能登剛が演じ、ポローニアスは劇団俳優座の武正忠明から豊泉由樹緒に変わっていた。
前回気がつかなかっただけか、それとも記録していなかっただけなのか覚えていないが、ポローニアスがオフィーリアとハムレットを出会わせて、自分たちは隠れてそれを観ようとオフィーリアを説得している場面に、ハムレットがオフィーリアと一緒にいてすべてその会話を聞いており、ハムレットはポローニアスに早く隠れろと指示するが、ポローニアスはその暇はありませんでしたと答える。
これなどはハムレットが分かっていてオフィーリアに彼女の父親はどこにいると問い詰める場面を茶番化したものとして変容させていて面白い趣向だと思った。
このような時間的ずれのある違った場面を、同一の舞台上に交錯させて演じさせる演出は他にも随所に見受けられた。
前回特別に記していないので覚えがないのだが、前回もレアティーズを演じたM・ドラチェーニンと今回ギルデンスターンを演じたS・メドベージェフがともにロシア語で台詞を言っていたのが今回印象的に感じた。
もっとも言葉が分からなくても言っている内容が分かっているので、前回ロシア語で言っていたとしても気にならなかったので記録していなかっただけかも知れない。(前回はクローディアスをベリャコーヴィッチが演じているので、彼もロシア語でしゃべっていたはずであるが、気にならなかったのか特に記録に残していない)
例の’To be or not to be’の台詞―この台詞は前回同様にレアティーズとの剣の試合を前にして言われる―の翻訳が、「このまま行くのか、かえすのか」とあって一瞬戸惑いを感じた。前回はこの台詞がいつまでたっても出て来なかったのでこの翻訳に気がつかなかったのか、その辺のところは分からない。
ハムレットの最後の場面にホレイショーの出番がまったくないのは前回同様であるが、最後に登場するフォーティンブラス(清川佑介がローゼンクランツとの二役で演じた)は、前回の演出では片目に黒い眼帯を付けた姿であったが今回は普通の状態であったのも小さな変化の一つであった。
所作など細かい変化が随所に見受けられたが、前回同様、ハムレットを演じた南保大樹がすばらしく、見応えがあった。
ガートルードの星野あかり、オフィーリアの吉田美奈子、亡霊の村上博などは前回同様変わらず、いずれも好演。
また、次の再演を楽しみにしたくなる舞台であった。


(翻訳/外塚由利子、佐藤史郎、翻案・演出・美術/V・ベリャコーヴィッチ、3月8日(土)昼、
下北沢・本多劇場にて観劇。チケット:4500円(シニア)、座席:F列16番、プログラム:200円)

 

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