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  宮本亜門演出、ミュージカル版 『ヴェローナの二紳士』       No. 2014-049

 平日のマチネということもあって観客のほとんどが女性で、男性はほんの一握りで、しかもほとんどみな高齢者。チケットを抽選の先行予約の甲斐もあって(?!)、手に入れたXA列は思いもよらぬ最前列の中央部上手よりの席であった。
 シェイクスピア関連というだけで選んだ演目で、演出の宮本亜門以外、出演者についてはまったく初めて目にする名前ばかりで、当初の関心事はもっぱらシェイクスピアの作品ということにしかなかった。 
 前半部は観客の中で女性群に囲まれた自分がまったく浮いた感じがし、自分とは違う異次元の世界にいるような気がして、先が思いやられていた。 
 冒頭部では、舞台前面にスクリーンが降りてきて映像が映し出されたが、最前列だと画面が目の真ん前で全体を観るのに一苦労であった。 
 東京のどこかの公園で若者が音楽のライブをやっている映像で、そのライブの延長のようにして客席から出演者たちが舞台へと上がってきて華やかに幕開けとなる。 
 台詞劇に慣れ親しんでいる身にはマイクを使っての唄や台詞が当初ノイズにしか響かず、多少苦痛すら感じたが、終わってみれば十二分に楽しんだ自分がそこにいた。 
 シェイクスピアのオリジナルを巧みにアレンジした面白さを追う楽しみに満ちていて、原作との違いを見つけることや、シェイクスピアのほかの作品を台詞の中に取り入れたちょっとしたことの発見の面白さもあった。 
 プローテュースが父親の命令でミラノに遊学するために発つ前夜、恋人のジュリアと関係を結ぶ場面(原作にはない)はロミオとジュリエットの後朝の別れの場面を感じさせ、しかもジュリオはそれで妊娠してしまう。 
 そこでジュリアと侍女のルーセッタは、男装してセヴァスチャンとシザーリオと『十二夜』の登場人物名を使ってプローテュースを追っていく。 ミラノに先に旅立ったプローテュースの親友ヴァレンタインは、ミラノ公の側近ではなく単なる代筆屋でしかない。 
 ミラノ大公の娘シルヴィアは、財産目当てで娘を資産家のシューリオと結婚させられようとしている。 シルヴィアにはエグラモーという恋人がいたが、彼は大公のために戦地に兵士として送られてしまっている。 
 ミラノ大公は破綻しかけていたミラノを再建し、次の選挙に打って出ようと票集めをしている。 
 大公は集団自衛権を成立させたので戦争がしたくてたまらない。 そんなミラノ大公に対して、一人の若者が「再稼働反対!」の鉢巻きを締めて座り込みをしているが、大公の兵士に連行されて処刑される。
 このような現代の日本を取り巻く政治的な問題に対して、諧謔性を持ったメッセージを織り込んだ台詞に、思わず「やったな!」と喝采を送りたくなった。 
 シルヴィアの結婚式の前夜、ヴァレンタインは親友のプローテュースの密告でエグラモーと同じように兵士として戦地に送られてしまう。 彼女を救いだしにやってくるのは、彼女の最初の恋人エグラモーであった。  エグラモーはアラビア風衣裳で、怪しげなガスを噴き出す武器を持って大公の兵士たちを眠らせ、シルヴィアを拉致する。 
 大公はシルヴィアが拉致されたと聞いて「拉致はいかん」とあとを追わせ、北朝鮮の拉致問題を思わせる。 
 拉致されたシルヴィアを助け出そうとプローテュースとヴァレンタインは一緒になって、エグラモーと彼につき従う竜の化身と戦いう。 
 竜に襲われて危ういところを救われたヴァレンタインは、友情を裏切ったプローテュースを許す。 自由の身になったシルヴィアは父親の大公にヴァレンタインとの結婚を許してくれないと浮気のことをばらすと脅迫し、ヴァレンタインを跡取りにすることを認めさせる。 
 シルヴィアに横恋慕して自分を裏切ったプローテュースに対してジュリアは、自分の愛を信じるためと言ってプローテュースを許すが、彼の行為自体に対してはとことん追求して許さない。 
 このような原作とのちょっとした違いを見出しながら、この華やかな劇(ショー)を二重にも三重にも楽しむことができた。 
 上演時間、休憩20分をはさんで2時間40分。


演出/宮本亜門、脚色/ジョン・グアーレ&メル・シャピロ、
歌詞/ジョン・グアーレ、音楽/ガルト・マクダーモット、12月8日(月)13時開演、日生劇場
チケット:(S席)13000円。座席:1階XA列24番

 

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