明星大学創立50周年記念事業
2部構成で、第一部は東路要社中による日本舞踊、長唄『魔女たちの森』の上演、インタールードとして明星大学の岡田恒雄ドイツ語教授の「日本で上演された劇『マクベス』および映画『蜘蛛の巣城』について」の解説をはさんで、第二部が劇団解体社による『マクベス/ファルマコス』の上演。
第一部の『魔女たちの森』は、神田友博の口上に始まって、東路要、太石好美、味岡ちえりの三人による日本舞踊で、三人の魔女を中心に『マクベス』が演じられた。
フードと一体になった黒いマントに包まれた魔女たちが手を拡げた姿がカラスを思い浮かばせ、魔女の姿として新鮮な感覚を感じた。
魔女以外の場面ではマントを脱ぐと白い着物姿で、ダンカン殺害の場面など視覚化されて演じられ、日本舞踊と坪内逍遥翻訳による台詞がマッチングしていて心地よく聞こえ、わずか20分足らずであったが珍しい趣向を楽しむことができた。
なお、この魔女を演じた3人は、次の劇団解体社の上演にも、新しい6人の「魔女」の中に加わって出演しており、口上役も解体社僧演技陣出演のシーン5の「阿保舟H26」 に参加していた。
第二部の劇団解体社による『マクベス/ファルマコス』は、一口で言えば身体表現による演劇で、劇団紹介のプロフィールによれば、劇団解体社は「身体の演劇」を探求しながら、「人間身体」と、それをめがける権力/暴力への批判に取り組み続けてきたとある。そして、めざすところは、人間以後の演劇=ポスト・ヒューマン・シアターの探求であるという。
タイトルにある「ファルマコス」については「古代ギリシヤのイオニア系諸都市で市のけがれを負わされ、追放または殺された人身御供」と解説されている。
6つの場面で構成され、第1の場面「マクベス追想」に始まり、「<夜>あるいはマクベス夫人」、「バンクォーの弁明」、「あたらしい『魔女』」、「阿保舟H26」と続き、最後が「供養」となっていて、インドネシアの俳優トニ―・ブルールがインドネシア語で演じる。
所作、台詞とも極端なまでに抑制されていて、静止した状態の登場人物はオブジェのようにそこにあるだけの存在で、見ていて息苦しくなるような緊迫感を感じた。
『マクベス』らしさを感じるのは2番目のシーン「<夜>あるいはマクベス夫人」ぐらいで、ほとんどが抽象的なイメージの舞台で、劇団名にふさわしく、解体された『マクベス』であった。
観客は100名に満たなかったと思うが、ほとんどが高齢者で、しかもその内の7割以上が女性であったが、おおむね肯定的な評価の感想のようであったのは少し意外でもあった。
いずれにしても珍しいものを観ることができてよかった。
10月18日(土)14時開演、明星大学・シェイクスピアホール
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