高木登 観劇日記2014年 トップページへ
 
  タイプスプロデュース第58回 『リア王』      No. 2014-04
 

タイプス15周年記念第1弾として代表自らがタイトルロールを演じる。
開場時間前には江戸東京博物館の大ホールの前には、大勢の人が押し寄せていて圧倒される思いであった。
出演者の年齢層と同じく、観客の年齢層もいろいろで若い人が多いのにも驚いた。
全席自由ということで、例によって最前列中央の席をゲット。
隣の若い女性二人が出演者と登場人物のことで、ケント伯のことをコーデリアの恋人っぽい役だと話しているのが聞こえ、驚くというより面白いと思った。
主役のリアを演じる新本一真もリアを演じる年齢としては非常に(と言ってもよいくらい)若いが、このケントを演じる鈴木文健も23歳と若く、シェイクスピアの設定年齢よりずいぶんと若いので、彼女らの話も奇抜というより、そういう設定もありかなと納得してしまう。
ケントが変装したカイアスを演じるとき、鈴木はバックテンを切って軽快な演技を見せ、若いケントを感じさせる。
これまでにもタイプスのシェイクスピア劇の特徴として、村井利徳と井上達也の生演奏、そしてダンサーの踊りが入ることであるが、今回は舞台も広く、12名のダンサーが序幕の「リア王のテーマ」に始まって、最後の「戦場のテーマ」まで6回のダンスが入り、物語の進行の中でも大きな役割を果たしているだけでなく、ダンサーたちは時にリアの騎士たちになり、戦場の兵士たちにもなる。
4名の侍女役が、物語の進展を簡略に語るコーラスの役目をしているのも、この舞台のもう一つの特徴としてあげられる。
もう一つの大きな特徴としては、コーデリアを演じる田中香子が道化をも演じることである。
この設定はあるようにあって意外とあまりなされていないので、新鮮な感じがしたのは、田中の演技にもよるところが大きい。
道化が唄う歌の中で、『十二夜』の道化フェステが唄う歌が唄われたのも印象深く心に響いた。
オリジナルとは異なる結末に、この悲劇の中にかすかな光明を感じさせるものがある。
それは、リア亡き後オールバニ公が若い世代に国を治めるのを託そうとした時、ケントは「ご主君のお召しで旅に発たねばならない」と固辞し、エドガーは「父と静かに二人で暮らす」と言って断る台詞である。
原作ではグロスターは亡くなるが、ここでは生きていることになっている。
2時間の上演時間ということで全体的にはかなり圧縮された内容で、深みと陰影に欠けるうらみがあってダイジェスト版という感がぬぐえないが、反面そのテンポの良さを楽しむことができる。
ゴネリルとリーガンがエドマンドに惚れるきっかけなど、この圧縮された展開の中では、ふたりがエドマンドのいるところにわざわざ登場して意味ありげな視線を送って彼に気があるところを見せるところなど、内容として理解しても三人三様の心理状態を描き出すには物足りないが、ダイジェスト版として我慢するべきかもしれない。
そのエドマンドには林裕也が好演。ゴネリルは三咲順子、リーガンに森下友香、エドガーに青山治。
グロスター伯を石山雄大、コーンウォール公に武田光太郎、オールバニ公にひたひら、オズワルドに桑島義明。
台詞がほとんどない役に光永勝典、参謀役に瀬川新一。意外と出番が多かった紳士役の森田一休。
タイプスの15年の歴史の中ではその中頃から見始めたに過ぎないが、それでもその時間の流れの中での出演者の変遷も楽しみに一つになっている。
15年の間にはいろいろなことがあったと想像されるが、今回が58回目ということは年4回のペースであり、個人が主宰するもの(タイプスは劇団ではない)としては快挙と言ってもよく、15周年を祝して賛辞を送りたい。


(台本構成・演出/パク・バンイル、2月11日(火)夜、江戸東京博物館にて観劇)

 

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