高木登 観劇日記トップページへ
 
  劇団豆狸旗揚げ公演 『夏の夜の夢』              No. 2014-026

 旗揚げ公演ということで少し楽しみにして出かけたが、残念ながら期待外れ。
 劇団旗揚げと言いながらも出演者総勢で10名のうち、劇団豆狸の団員はパックを演じた日野柚莉ひとりだけで、あとはよその劇団員とフリーの役者。これでは劇団の旗揚げというにはふさわしくないとしか言いようがない。
 いかにも寄せ集め的で、台詞が対話になっていない場面が多かった。
 その印象は、最近の若者(に限らないのだが)たちが、スマホをいじりながら相手の目を見ないで会話をしている姿と変わりない。
 劇の生命線が始めの数分間にあるということでそれなりの工夫を考え、冒頭部でパックと妖精が現れ、アテネの職人たちが演じる劇中劇のように『夏の夜の夢』の劇そのものを劇中劇的な扱いで、その概要を説明する。
 ヒポリタ/タイテーニア、シーシウス/オーベロンをそれぞれ一人の役者が演じるのは常道的であるが、そのほかでは妖精役がクィンスを演じる以外はすべて一人一役。
 演出の点で疑問を感じたのは、シーシウスとヒポリタの狩りの場面で、ヒポリタがシーシウスのすきを狙って剣で襲いかかり、二人が戦いを繰り返す。ヒポリタがシーシウスにふざけてやっているようにも見えず、意味の分からない演出であった。
 アテネの職人は、クィンスとボトム、フルートの3人のみで、公爵の前での芝居の上演はない。
 ハイライトは、ライサンダー、ハーミア、デミートリアス、ヘレナの4人の若者たちの恋のもつれの場面であるが、これが対話になっていない場面が多く、かったるいことこの上なかった。
 台詞の面では、いくぶんか聞くに堪えたのはシーシウス/オーベロンを演じた山中健司(スターダス21カンパニー所属)ぐらいで、あとは劇団豆狸唯一の劇団員である日野柚莉が一生懸命演じていたのがけなげに感じられた。
 アテネの職人たちの劇中劇はなかったが、出演者全員によるダンスが心を和ませてくれたのが唯一の救いであった。
 上映時間は、1時間30分。

 

福田恆存訳、友利哲健演出
7月26日(土)14時開演、学芸大学・千本桜ホール、チケット:2000円、全席自由

 

>> 目次へ